高層階の一室。
足を踏み入れた瞬間、視界がひらける。
ダークトーンで統一されたインテリアなのに、冷たくはない。
間接照明の柔らかい灯りが、空間にわずかな温度を落としている。
ホテルみたいだ、と思った。
けれど、どこか違う。
——“誰かの生活”じゃなくて、
“誰かの領域”みたいな空気だ。
「…………ここ、誰の家よ」
「俺ん家行くぞって言っただろ?」
寝ぼけてんのか?と悪態を付きながら、スーツを脱いでる王子。
あたしはまだ、状況把握ができないまま、リビングのドアに突っ立っている。
「悪い、ちょっと電話するぞ」
「……うん」
一面のガラス張りの向こうに、夜の街が輝いている。
(なんでここにいるんだっけ?……)
たしか。
BARビーナスベルトにいて、
王子と飲んでて、
終電を逃したから。
『俺ん家来い、説明するから』
(そうよ、それでタクシーに乗せられて……)
すると、電話中の王子がやってきて、肩を抱き寄せる。
「親父、例のアレ、婚約者連れてくから」
「それ!――婚約者っ!」
電話の向こうから聞こえる男性の笑い声に、はっと気づく。
(……しまった!)
「な?俺はこいつ――志穂だけだから、じゃあな」
(ちょっと待って、もう決まってるの?!)
慌てて口を押さえたがもう遅い。
王子は笑ったまま、あっさり切った。
「ごめんっ……声出ちゃった」
「くははっ……ほんとサイコーだな志穂はっ」
急に抱きしめてくるから、逃げ場がない。
細身なのに、しっかりとある筋肉。
スパイシーなウッド系の香り。
(……近い)
(こんな距離で、その匂いずるい)
「どうした……志穂?」
怪訝な瞳で覗き込まれる。
その距離に心臓がうるさくて、あたしは王子をおしやる。
「ちゃんと説明してっ……意味わかんないからっ」
「わかった」
足を踏み入れた瞬間、視界がひらける。
ダークトーンで統一されたインテリアなのに、冷たくはない。
間接照明の柔らかい灯りが、空間にわずかな温度を落としている。
ホテルみたいだ、と思った。
けれど、どこか違う。
——“誰かの生活”じゃなくて、
“誰かの領域”みたいな空気だ。
「…………ここ、誰の家よ」
「俺ん家行くぞって言っただろ?」
寝ぼけてんのか?と悪態を付きながら、スーツを脱いでる王子。
あたしはまだ、状況把握ができないまま、リビングのドアに突っ立っている。
「悪い、ちょっと電話するぞ」
「……うん」
一面のガラス張りの向こうに、夜の街が輝いている。
(なんでここにいるんだっけ?……)
たしか。
BARビーナスベルトにいて、
王子と飲んでて、
終電を逃したから。
『俺ん家来い、説明するから』
(そうよ、それでタクシーに乗せられて……)
すると、電話中の王子がやってきて、肩を抱き寄せる。
「親父、例のアレ、婚約者連れてくから」
「それ!――婚約者っ!」
電話の向こうから聞こえる男性の笑い声に、はっと気づく。
(……しまった!)
「な?俺はこいつ――志穂だけだから、じゃあな」
(ちょっと待って、もう決まってるの?!)
慌てて口を押さえたがもう遅い。
王子は笑ったまま、あっさり切った。
「ごめんっ……声出ちゃった」
「くははっ……ほんとサイコーだな志穂はっ」
急に抱きしめてくるから、逃げ場がない。
細身なのに、しっかりとある筋肉。
スパイシーなウッド系の香り。
(……近い)
(こんな距離で、その匂いずるい)
「どうした……志穂?」
怪訝な瞳で覗き込まれる。
その距離に心臓がうるさくて、あたしは王子をおしやる。
「ちゃんと説明してっ……意味わかんないからっ」
「わかった」



