あの挨拶のあと、社長がうまくその場を収めて、パーティーはつつがなく幕を閉じた。
綾人はなぜかご機嫌で、あたしを引き寄せたまま離さなかった。
彼の隣で挨拶回りをしたものの、心身ともに疲労困憊なあたしは、一刻も早く帰りたかった。
参加者たちも、少しずつ帰る支度を始めている。
「志穂、帰るぞ」
その声にあたしは、やっと安堵の息を吐く。
すると、後ろから呼び止められた。
「綾人」
振り向くと、社長が不敵な笑みでこちらを見ている。
「何だよ」
綾人も不遜……というか、ただのどや顔にも見えるけれど、口角が上がっている。
「務めは果たしただろ」
「連れて来いとは言ったが……」
社長は一度あたしを見る。
「“面白いもの”を連れてきたな」
(……は?面白いもの?ものっていった?!)
その言葉に、思わず顔を上げる。
綾人は、ふっと笑った。
「だろ」
軽く言い返すその声に気づく。
(この二人……間違いなく親子だわ)
すると社長の視線が、もう一度わたしに向く。
「藤原さん。この男を選んだこと、後悔しないといい」
静かな声音だが、警告でもあり、承認でもあるように聞こえる。
(選んだわけじゃない。フリの婚約者なのに)
「……はい」
でも、気づけば、そう答えていた。
社長は小さく頷くと、 そのまま背を向けた。
去っていく姿を見送ると、今度こそ固く張り詰めた体が一気に緩む。
「……はぁ……」
思わず息を吐いた瞬間、ぐっと腰を引き寄せられる。
「随分、堂々と名乗ってたな」
「……名女優だからね」
「違いねぇな」
「……もう早く帰ってミルクティー飲みたい……」
噛みつく元気も今はなく、ただひたすら家に帰りたかった。
綾人はなぜかご機嫌で、あたしを引き寄せたまま離さなかった。
彼の隣で挨拶回りをしたものの、心身ともに疲労困憊なあたしは、一刻も早く帰りたかった。
参加者たちも、少しずつ帰る支度を始めている。
「志穂、帰るぞ」
その声にあたしは、やっと安堵の息を吐く。
すると、後ろから呼び止められた。
「綾人」
振り向くと、社長が不敵な笑みでこちらを見ている。
「何だよ」
綾人も不遜……というか、ただのどや顔にも見えるけれど、口角が上がっている。
「務めは果たしただろ」
「連れて来いとは言ったが……」
社長は一度あたしを見る。
「“面白いもの”を連れてきたな」
(……は?面白いもの?ものっていった?!)
その言葉に、思わず顔を上げる。
綾人は、ふっと笑った。
「だろ」
軽く言い返すその声に気づく。
(この二人……間違いなく親子だわ)
すると社長の視線が、もう一度わたしに向く。
「藤原さん。この男を選んだこと、後悔しないといい」
静かな声音だが、警告でもあり、承認でもあるように聞こえる。
(選んだわけじゃない。フリの婚約者なのに)
「……はい」
でも、気づけば、そう答えていた。
社長は小さく頷くと、 そのまま背を向けた。
去っていく姿を見送ると、今度こそ固く張り詰めた体が一気に緩む。
「……はぁ……」
思わず息を吐いた瞬間、ぐっと腰を引き寄せられる。
「随分、堂々と名乗ってたな」
「……名女優だからね」
「違いねぇな」
「……もう早く帰ってミルクティー飲みたい……」
噛みつく元気も今はなく、ただひたすら家に帰りたかった。



