終電を逃した夜、鑑賞用の王子様は婚約者にした私を離さない

暫くして、ふと、少し呆れた声音で、王子が問いかける。

「お前さ、ほんと俺の顔が好きだよな」 
「え?うん。顔は好き。いつも言ってるでしょ、王子は鑑賞用だからね」
「ふーん、まぁいいけどな」

聞いておきながら、その反応の薄さはなによ。
ただ、口調とは裏腹に、熱く這うような視線が唇に注がれている。

何となく気まずくて、また一口カクテルを運んだ。  
 
「……志穂、いま飲んだな」
「え?……」

王子は、ニヤリと企んだ笑みを浮かべた。
思わず、背筋がぞくりと走る。

「メッセ、読んだよな?」

確かに。
昨日の夜、届いたメッセージには――
『頼みたい事あるから、ビーナスベルト集合。拒否権無し』
と、あった。

「奢った酒飲んだろ、拒否権ねぇから」 
「ちょっと!色々ずるいじゃないっ……」

タダほど怖いものはない。
あたしは、頭の中で最悪の頼み事を片っ端から想像した。

「志穂」 
「……な……なに?」

こんなに長く見つめられたことがないから、ぴくんと跳ねる鼓動。
彼の双眸に、狼狽してるあたしが映っているのがわかる。
それくらいの距離。

「今日から俺の"婚約者"な」