綾人の腕に手を添えたまま、ホテルの中へ足を踏み入れる。
外の喧騒がうそのように遠のく。
到着した場所は、格式ある老舗ホテルとして有名なワタセホテル。
もちろん、泊まったこともなければ、エントランスすら入ったこともない。
(テレビで観るより……煌びやかだし気品ある……)
心まで迷子にならないよう、少しだけ手の力を強めた。
進むたびに、「藤垣様、お疲れ様です」「本日はよろしくお願いいたします」と声が飛んでくる。
そのたびに綾人は軽く頷くだけ。
(なにこの人。経営企画部じゃなくて王族なの?)
でも、本当に今日の綾人は別人みたいだ。
仕立ての良いスーツに身を包み、整えられた髪型、仕草も品の良さが窺える。
(場違いなくらい……あたし浮いてるかも)
それでも絡めた腕からわかる体温は、いつもの彼そのものだ。
(綾人の匂いも体温も……安心する)
いつもと同じ香水の香りに、落ち着く日が来るなんて。
「綾人」
「ん?」
「あんた本当に経営企画部?」
「一応な」
「……絶対それだけじゃないでしょ」
エレベーターを降りると、目の前に【瑠璃】という入口。
大宴会場……この規模の大きさは嫌な予感しかしない。
確証がほしくて、綾人の腕を引っ張る。
「そろそろ、ここに連れてきた理由、教えなさいよ」
「察しのいい志穂ならわかってるだろ?」
(……やっぱり!でもお父さんに挨拶だけなのに、この規模はなに?!)
少しだけ睨んだ視線を送ると、推しと同じ涼しい顔……いや、見たことないくらい胡散臭い笑みを浮かべる。
そして、ほどかれた腕はあたしの腰を抱き寄せた。
「いつものお前でいいんだよ。婚約者だけどな。まさか……怖じ気づいた?」
「はぁ?完璧に演じきってやるわよっ、見てなさい」
「見ててやるよ、志穂」
外の喧騒がうそのように遠のく。
到着した場所は、格式ある老舗ホテルとして有名なワタセホテル。
もちろん、泊まったこともなければ、エントランスすら入ったこともない。
(テレビで観るより……煌びやかだし気品ある……)
心まで迷子にならないよう、少しだけ手の力を強めた。
進むたびに、「藤垣様、お疲れ様です」「本日はよろしくお願いいたします」と声が飛んでくる。
そのたびに綾人は軽く頷くだけ。
(なにこの人。経営企画部じゃなくて王族なの?)
でも、本当に今日の綾人は別人みたいだ。
仕立ての良いスーツに身を包み、整えられた髪型、仕草も品の良さが窺える。
(場違いなくらい……あたし浮いてるかも)
それでも絡めた腕からわかる体温は、いつもの彼そのものだ。
(綾人の匂いも体温も……安心する)
いつもと同じ香水の香りに、落ち着く日が来るなんて。
「綾人」
「ん?」
「あんた本当に経営企画部?」
「一応な」
「……絶対それだけじゃないでしょ」
エレベーターを降りると、目の前に【瑠璃】という入口。
大宴会場……この規模の大きさは嫌な予感しかしない。
確証がほしくて、綾人の腕を引っ張る。
「そろそろ、ここに連れてきた理由、教えなさいよ」
「察しのいい志穂ならわかってるだろ?」
(……やっぱり!でもお父さんに挨拶だけなのに、この規模はなに?!)
少しだけ睨んだ視線を送ると、推しと同じ涼しい顔……いや、見たことないくらい胡散臭い笑みを浮かべる。
そして、ほどかれた腕はあたしの腰を抱き寄せた。
「いつものお前でいいんだよ。婚約者だけどな。まさか……怖じ気づいた?」
「はぁ?完璧に演じきってやるわよっ、見てなさい」
「見ててやるよ、志穂」



