敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています

 自宅の前をウロウロする怖い人たちに見つからないよう、気配を消しながらそっと遠ざかった。
 十分に距離を取ったところで、私はスマホを出して父に電話をかける。
 数コールののち、『なんだ?』という不機嫌そうな低い声が耳に届いた。

「もしもし、お父さん、今どこ?」

 そう聞いたものの、すぐにどこにいるか想像がついた。
 電話の向こう側が、やけにざわざわと騒がしい。きっとパチンコ店にいるのだと思う。

「ギャンブルはやめてって言ったでしょ」
『うるさいな。仕事、今日で辞めた。無性にむしゃくしゃしたんだ。ちょっとくらいいいだろ』
「え、もう辞めたの?」

 父は一週間前から工事現場で働き始めたばかりだ。もしかしたらクビになったのかもしれない。
 最近の父は職を転々としていて、働き口が見つかったとしても、こうしてすぐに辞めてしまう。

 はぁっと落胆のため息が出た。違う仕事をまた探さないといけない状況になったのだけれど、それはさておき、今は自宅前の男たちのことを伝えなくては。

「家の前に黒い車が停まってて、怖い人たちがいるの。あれじゃ中に入れない」
『それ……ヤミ金融のやつらだ。支払い期日が昨日だったから、取り立てにきたんだろう』
「やっぱり。どうしてそういう人たちから借りるの。危険でしょ?」
『ほかで借りられないんだから仕方ないんだよ!』