敏腕CEOと契約結婚したら、攻略不能なほど溺愛されています

 賢也くんが変なことを言うものだから、驚いた拍子に咀嚼していたものを吹きそうになった。
 あわてて水筒のお茶を飲み、ホッと息を吐く。

「いやいや。そんなわけないでしょ」
「なんにもわかってないなぁ。絶対下心あるに決まってますよ」

 全力で否定してみたけれど、賢也くんはいつものように起伏の少ない口調で反論した。自信があると言わんばかりだ。

「本当にないって。京極さんはキラキラしてるけど、私は見てのとおりこんなに地味だし。全然釣り合ってないもん」

 端正な顔立ちをした京極さんは、これまでそれなりに女性と付き合ってきただろう。でも、私には恋愛経験がまったくない。
 子どものころからゲームやマンガが大好きで、同じクラスの男の子より、二次元の世界にいるキャラのほうが魅力的だった。
 それは今も同じで、没頭できる趣味があれば十分幸せに生きていけると思っている。

「京極さんは私とゲームの話をしたいだけだよ。私もそう。キャラの育て方とかレアアイテムの獲得方法とか、話してると楽しいから」

 同じ趣味の人と知識を交換し合える時間は最高だ。セブエリの次のレイド戦に向けて作戦を立てておきたいな……なんて想像すると、自然に顔がほころんでくる。

「まぁ、陽咲さんにその気がないならいいですけど」

 言いながら、賢也くんがふいっと視線を逸らせる。感情を交えない話し方が彼らしいなと思いつつ、苦笑いを返しておいた。