私のぷくっと膨らんだキモチ、今が食べごろです

桜木美和(さくらぎみわ)、25歳。
営業事務をやって3年、それなりに仕事も慣れてきた。

そんな私の至福はこの真っ白でまるっとした大福。

眞尾(まお)先輩、取引先の方から頂いたんですけど召し上がりますか?」

この大福を隣の席の眞尾航大(まおこうだい)先輩に差し入れること。

「あ、これ香天屋(こうてんや)のやつじゃない?」

「そうです、みなさんの分あるので眞尾先輩もどうぞ」

「やった、嬉しいありがとう」

外回りから戻って来た眞尾先輩にひとつ、まるっとした大福を渡した。

見るからにもっちもちで弾力ありそうな大福は一口では難しそう、だけど眞尾先輩はそんなのお構いなしに大きなお口を開けるから。
そんな仕草が可愛くて、子供みたいにぷくっと頬を膨らませて誰よりおいしそうに頬張る姿が…

たまらない!
最高、かわいい!!

大福じゃなくて眞尾先輩を食べたいぐら…
コホンッ、さすがにそこは自重しましょう。

ぷっくぷくに膨らんだ眞尾先輩のほっぺが大福よりもちもちで気持ちよさそうなんて、誰にも言えない私だけの秘密だから。

ほら、食べるよ。

大福を掴んだらそのまま大きなお口を開けて、ぱくっとひとくち…!

「……。」

「…え?」

祈るみたいにぎゅっと合わせた手を前にじーっと眞尾先輩を見てたら眉間にしわを寄せられた。
大きく開けたお口をむぎゅっと閉じて、掴んだ大福を元に戻すから思わず声に出ちゃって。

「食べないんですか!?」

「食べない」

「香天屋の大福、眞尾先輩お好きですよね!?」

「好きだけど…」

チラッと伺うように私の顔を見る、ちょっと嫌そうな顔で。

「ここでは食べない」

ガンッと釘を刺されたみたいに、眞尾先輩の視線で心の扉を閉められた。

返された大福が虚しくデスクの上に残って、祈ってた私の手から力が抜ける。

この瞬間を楽しみに、楽しみに待ってたのに…

「眞尾くん、ちょっといい?」

「あ、はい大丈夫です」

……。

竹野(たけの)主任に呼ばれて眞尾先輩が行ってしまった。

これはきっとバレてたんだ、私がこの大福に思いを馳せてたことを。
赤ちゃんを見守るような気持ちで大福を食べる眞尾先輩のことを見てたのが、バレ…っ