ただいま、おかえり。



春だった。



仕事帰り。



Mちゃんは先に家へ着いた。



夕飯を作る。



テレビの音が流れている。



いつもの夜。



しばらくして玄関が開く。



「ただいま」



聞き慣れた声。



Mちゃんは少しだけ笑う。



そして答える。



「おかえり」



何百回も繰り返した言葉。



でも。



何年経っても、

少しだけ幸せになる言葉。



恋人だった頃。



二人は未来を心配していた。



うまくいくかな。



ずっと一緒にいられるかな。



そんなことばかり考えていた。



でも未来は案外普通だった。



普通に喧嘩して。



普通に笑って。



普通に歳を重ねる。



だけど。



その普通が、

何より幸せだった。



恋は終わった。



ドキドキするだけの関係は終わった。



その代わり。



二人は家族になった。



そして今日もまた、

同じ家へ帰る。



「ただいま」



「おかえり」



それが、

二人の幸せだった。