壱くん、お願いだから近づかないで。





「じゃあ、また明日」

「うん。純さん、ここまで送ってくれてありがとうございました」


 お手洗いから恐る恐る戻ると、男の子たちはもういなくなっていた。ほっと胸を撫で下ろす。帰る時間になると、ちょうどバイトが終わった純さんが「途中まで一緒に行くよ」と声をかけてくれた。


「うん。こちらこそ、毎度ありがとう」

「はい! 花純もありがとう、おやすみ」


 純さんと花純ちゃんと別れて、家への道を一人で歩く。夕暮れに染まった住宅街は静かで、来るときよりずっと穏やかな気持ちで歩けた。

 今日も楽しかったな。甘いものも食べられたし。

 そう思ってほんの少し口角が上がったのも束の間、家の玄関を開けた瞬間に記憶が蘇った。

 男の子が、近くにいたんだった。

 憂鬱が、また胸の底にじんわり広がった。