壱くん、お願いだから近づかないで。



 委員会が終わって、荷物を持って図書室を出ると、外はすっかり雨になっていた。

 廊下の窓から校庭を見ると、雨粒が地面を叩いていて水たまりがいくつもできている。さっきより雨足が強くなっていて、校庭の木々が風に揺れていた。傘は持ってきているけれど、この雨の中を帰るのか、と思うと少し気が重くなった。


「雨、強くなったね」


 隣で雉真くんも窓の外を見ている。


「うん……帰り、濡れそう」

「急ごうか」

「そうだね」


 玄関で傘を広げて、二人で校舎を出た。

 雨の匂いが鼻をくすぐって、地面がしっとりと濡れている。アスファルトが黒く光っていて、水たまりに雨粒が落ちるたびに小さな波紋が広がっていく。

 校門まで続くアプローチを並んで歩いていると、急に風が吹いて雨が横から来た。思わず傘を傾けると、隣の雉真くんも同じように傘を傾けていて、二つの傘がぶつかりそうになる。


「ごめん」

「ううん、私こそ」


 少し距離を取って、また並んで歩く。雨の中を歩く人の少ない道は、雨音だけが響いていて静かだ。