壱くん、お願いだから近づかないで。




「私も行きたい。去年の花火、綺麗だったもんね」

「でしょ〜! じゃあ今年も行こう、全員で」

「花純も誘おう」

「もちろん! あ、角谷さんも誘う?」


 ゆっこがそう言ったところで、私は少し考えた。角谷さんとは遠足以来ちょくちょく話すようになって、お昼を一緒に食べることも増えた。

 最初はクラスが違うからどうかなと思っていたけれど、彼女は自然体で接してくれるから一緒にいると楽だ。誘うのは自然な流れかもしれない。


「いいんじゃないかな、角谷さん絶対浴衣似合うし」

「だよねぇ! じゃあ後で声かけてみる」

「そういえば佑茉、雉真くんとはどうなの最近」


 突然ゆっこがにやにやしながら言い出して、私はお茶を飲む手を止めた。


「どうって、何が」

「だから〜、委員会でよく一緒じゃない。なんか進展とかないわけ?」

「ない。普通に委員会の仕事してるだけだから」

「本当に〜? 花純、どう思う?」

「どうって聞かれても……佑茉が男の子と普通に話せるようになってきてるだけでも、結構すごいことだと思うけど」


 花純がおっとりした口調でそう言った。

 それは確かにそうかもしれない、と思ったけれど認めるのが癪で「別に普通だよ」とだけ返した。
 ゆっこはまだにやにやしていたけれど、チャイムが鳴ったおかげでその話はそこで終わった。

 午後の授業が始まって、五時間目は国語、六時間目は体育。
 体育だけは梅雨でも体育館でできるから助かるけれど、湿気のせいで体を動かした後は余計にじっとりした。着替えを終えて教室に戻る頃には、窓の外はもう本降りの雨になっていた。