壱くん、お願いだから近づかないで。





 七月に入っても、梅雨はなかなか明けなかった。

 朝のホームルームが終わって一時間目が始まる頃には、窓の外はもうどんよりと曇っていて、昼過ぎにはぽつぽつと雨が降り出すのがここ最近の定番だった。傘を持ち歩くことが習慣になって、鞄の中が少し重い。靴下が湿気を吸って気持ち悪い日も増えて、梅雨ってどうしてこんなに長いんだろうと毎年思う。

 それでも七月になると、気持ちはじわじわと浮き立ってくる。

 なぜなら、もうすぐ夏休みだから。


「ねぇねぇ、夏休みどこか行く? 花火大会とか行きたいな」

「行きたい! 浴衣着たいし」

「佑茉はどうする?」


 昼休みの中庭で、ゆっこが目を輝かせながら言う。じめじめした空気の中でも彼女はいつも元気で、その明るさがなんだか眩しい。お弁当のおかずをつつきながら、私もつられて少し笑った。