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「……うわぁ、美味しそう」
「本当に美味しそう……!」
放課後になり、ホームルームが終わってから足早に学校を出た。向かうは駅前のカフェ。いつものメンバーでよく宿題をしに来る、すっかり定番になった場所だ。
「いらっしゃいませ、お姫様方」
「あ、花純ちゃんのお兄さん! こんにちわ」
「こんにちわ、今日もありがとうね〜」
花純ちゃんとは、いつメンの一人で山口花純ちゃんのことだ。ふんわりした雰囲気の、おっとりした子で、みんなの癒し担当。そのお兄さんの純さんは、このカフェの店員で大学生だ。いつも私たちのことを「お姫様方」と呼ぶのが少し恥ずかしいけど、なんだか嬉しい。
「新作出たって聞いたから来ちゃいました!」
「新作はね、これ。ドリンクは濃厚抹茶のフラペチーノで、スイーツは茶ッフルだよ」
茶ッフル……?
「抹茶のワッフルのことで、めちゃくちゃ美味しいし推せるよ」
「え、じゃあみんなこれにしよ! 抹茶抹茶しよ!」
「賛成〜!」
私たちは全員同じものを注文した。「ちょっと待っててね」と純さんは厨房の奥へ消えていく。
それからしばらく、今日の授業のこととか好きなアイドルのこととかをおしゃべりしていると、純さんとは違う女性店員さんが注文した品を運んできてくれた。
目の前に置かれた瞬間、ふわりと抹茶の香りが広がる。
一口食べると、外はさくさく、中はもちもちで、甘さと抹茶の苦みが絶妙に合わさって……
ん〜〜! 美味しい! 甘いものは本当に世界を救うよね。抹茶最高、甘いもの最高! 生きていてよかった!
「……あれって、サクジョじゃね?」
「え、どこ? 赤い色ってことは中学生だよな……めちゃくちゃ可愛いじゃん」
幸せいっぱいでいたのに、突然男の子たちの声が聞こえてきて、私は固まった。
サクジョとは桜ヶ平女子学院のことだ。赤い色とはベレー帽の色のことで、中学が赤、高校が紺と決まっている。このあたりに住んでいる人なら誰でも知っていることだけど……でも、でも。男の子が近くにいる。それだけで、心臓がどきどきと嫌な音を立て始める。
「声、かけてみよーぜ」
いやいやいや、やめて! こっちに来ないで!
近づいてくる気配を感じた瞬間、私はゆっこの腕を軽く叩いた。
「ちょっとお手洗い行ってくるね!」
返事も待たずに席を立ち、お手洗いへ逃げ込む。ドアを閉めてから、はぁっと大きく息を吐いた。どうしてこんなに怖いんだろう。自分でもわかってる、大したことじゃないって。でも体が言うことを聞いてくれない。
鏡の前で深呼吸を三回して、気持ちを落ち着かせた。



