「……なんで、こうなった……」
「あはは、ごめんね」
土曜日。テスト週間に入って最初の週末。私は今、雉真くんと二人きりでカフェにいる。
事の発端は昨日だ。みんなで勉強会をしようと話がまとまって、いつものメンバーに角谷さん、雉真くん、林田くんを加えた七人で集まる予定だった。なのに今朝から次々とメッセージが届いて——
【体調悪くて、今日行けないごめんね。 果歩】
【おじいちゃんが亡くなって……お葬式に行かないといけなくなったから行けない。ごめんね 結衣子】
【お父さんが入院して心配だから今日はやめとくね 花純】
【ごめん、予定が入った。 林田】
まるでみんなで示し合わせたみたいに、全員ドタキャン。残ったのは私と雉真くんだけだった。
「雉真くんが謝ることじゃないけど……でも、みんな来ないし今日は帰る?」
二人きりになるなら、正直言って気まずい。それに尽きる。そう思って立ち上がりかけると、手首をそっと掴まれた。
「せっかくだし、お昼ご飯だけでも一緒に食べませんかっ?」
少し上ずった声で、でもまっすぐに言ってくる。
「え、あ……そうですね。ここのサンドイッチ美味しいんだよ。い、一緒に食べましょう……」
なぜかこちらも敬語になりながら、私はもう一度座った。店員さんを呼んでいつも頼むカツサンドとピザサンドを注文する。
「よくここには来るの?」
「うん、学校近くだから……ゆっこたちとよく来るよ」
「そうなんだ……」
「…………」
「…………」
はい、会話終了。
図書委員の活動を通じて話すことには慣れてきたとはいえ、二人きりで向かい合って雑談するのはまた別の話だ。そもそも、男の子とまともに会話するようになったのなんて、中学に入ってから今年が初めてに近い。
何を話せばいいのかわからなくて、視線をテーブルに落としてしまう。
「……あ、あの——」
雉真くんが何かを言いかけた瞬間。
「お待たせしましたー! カツサンドと照り焼きサンドになります!」
店員さんの明るい声に遮られて、彼の言葉はそのまま空中に消えた。目の前に置かれたサンドイッチはふわっとした香りを漂わせていて、見るからに美味しそうだ。
今は、これを食べることに集中しよう。



