壱くん、お願いだから近づかないで。




「数学、苦手なの?」

「うん、ちょっと」


 ちょっと、どころではなくて、数学は成績をいつも引っ張っている科目だ。ケアレスミスが多いのはわかっているけれど、わかっていてもなかなか直せない。


「僕が教えようか」

「えっ、でも……」

「気にしないで」


 雉真くんの提案に、飛びつきたくなる気持ちが正直あった。だって本当に苦手で、このままじゃテストが心配で——でも、彼に頼るのは少し気まずくて、一瞬迷った。


「来週、一緒に勉強しようよ。角谷さんと大輝も誘って」


 みんなでなら、いっか。


「そうだね……」


 そんな会話をして、その日の委員会が終わるまで雉真くんは数学を丁寧に教えてくれた。苦手だった問題の解き方がすっと頭に入ってきて、いつもよりずっと早く宿題が終わった。