壱くん、お願いだから近づかないで。





 ……カチカチカチ。

 シャーペンの芯を出す音が図書室に小さく響いた。テスト週間が近づいているせいか、本を読む気分には全くなれなくて、今日は数学の教科書を広げている。ほとんどが一年生の復習範囲だから、なんとかなるはずなんだけど——


「……佑茉ちゃん」

「は、はい……なんでしょう」


 隣からそっと声がかかる。顔を上げると、雉真くんが私のノートをのぞき込んでいた。


「そこ、間違ってる。次数は2じゃなくて、1だよ」


 指の先を目で追うと、確かに計算が違っている。気づかなかった。


「それに、ここも計算間違ってる」

「あっ、え、ありがとう……」


 恥ずかしくなって、思わず声が小さくなった。