壱くん、お願いだから近づかないで。




「良かったぁ〜ありがとう、松岡さん!」

「いえ……お役に立てて良かったです」

「あー良かった。やっぱり同じクラスの方がいいもんね! あとから雉真くん来るからよろしくね」


 そう言い残して委員長は出ていった。そしてその数秒後、入れ違いになるようなタイミングで扉が開いた。


「あ、あれ……佑茉ちゃん?」

「私も、図書委員なので。半年はペアらしいです」

「そうなんだ、じゃあよろしくね」


 週に二回、放課後まで雉真くんと一緒だなんて。ただでさえ教室でも隣の席で、委員会まで同じだなんて——嫌がらせもほどほどにしてほしい。


「……はい、仕事の説明しますね」


 気持ちを切り替えるように、私は図書委員の仕事内容を説明し始めた。

 主な仕事は図書館の先生の補佐だ。放課後は先生が不在になるので、貸し出しの管理、返却本の整理、書架の整頓、おすすめの本を紹介するボードの作成——こなすことはいくつかあるけれど、慣れてしまえばそれほど大変ではない。

 忙しい時もあれば、ひたすら静かに本を読んでいるだけの日もある。去年まではその静けさが好きだったけれど……今は少し、複雑だ。


「大体はわかった。今日は何するの?」

「今日は……座ってるだけでいい日、です」


 それだけ言うと、私は彼から離れて本棚の整理を始めた。背表紙が逆さまになっている本や、順番がバラバラになっている棚を一冊ずつ直していく。単純な作業だけど、集中していれば余計なことを考えなくて済む。