壱くん、お願いだから近づかないで。





 緑がまぶしい季節の五月。
 気持ちのいい春の陽気はどこへやら、じめじめと湿気が肌にまとわりつき始めた今日この頃。それでも教室の窓から差し込む朝の光は柔らかくて、なんとなく今日も良い一日になりそうだと思わせてくれる。


「おはようー」
「おっは〜」


 挨拶が飛び交う教室に私も入ると「おはようー」と言いながら自分の席へ向かう。鞄を椅子にかけてから周りを見渡すと、あちこちで女の子たちがおしゃべりに花を咲かせていた。


「おはよ、松岡さん」
「おはよう!」
「ゆーまー! おはよう〜」


 みんなと挨拶をしあっていると、後ろからぎゅっと思いっきりハグをされた。突然のことに少し驚いたけれど、すぐに誰だかわかる。


「ゆっこ! おはよ!」
「おはよー! 今日も可愛いね、ゆま」
「ゆっこの方が可愛いよ」