「……あの、よろしくね」
斜め横から声がして、びくっとした。恐る恐る視線を向けると、にこにこした顔の男の子がこちらを見ていた。
「あっ、林田大輝です。名前言わないと失礼だよね、ごめんね。えーと……」
彼は座席表に目をやってから、また私を見た。
「佑茉ちゃんか、よろしくね。俺、色々よくわかってないからさ、教えてくれると嬉しいんだけど」
明るい声で、屈託なくそう言ってくる。悪い人ではないのかもしれない。でも私にとっては、それだけで十分に怖かった。
「そ、そうですか……私じゃなくても、いいですよね」
できるだけ素っ気なく返して、また窓の方へ顔を向ける。でも林田くんはそれでもめげずに話し続けていて、何かうまく断る言葉がないかと考える。だが、どうすればいいのかわからない。
「……その子、嫌がってるだろ」
今度は隣から低い声が聞こえた。視線をそっとずらすと、隣の席に座った男の子がこちらを見ていた。林田くんより少し落ち着いた雰囲気で、声も静かだ。でも男の子であることに変わりはなくて、私の心臓はまた跳ねる。
「えっと、大丈夫? あ、僕は雉真。雉真壱。よろしくね」
「はい……松岡、佑茉です」
「まつおかゆま……もしかして、雪原小学校だった? こんなにすぐに会えるなんて」



