壱くん、お願いだから近づかないで。





  ***


 ゆっこと花純と連れ立って二年生の教室棟へ向かい、廊下でゆっことはお別れする。
 花純と並んで教室に入ると、まだ男の子の姿はなかった。ほっと息をつく。


「佑茉、座席表見にいこう」

「うん」


 黒板の前に行くと、座席表が一枚貼り出されていた。目を細めて自分の名前を探す。


「佑茉、窓側だね」

「うん……花純は廊下側なんていいなぁ。変わってほしい」

「変わりたいけど、担任あの先生だし無理だろうね。健康体だし前の席じゃないから」


 ですよねぇ……それはわかってる。でも一人でいるのは心細くて、せめて近くにいてほしかった。


「でも、なんで私は男の子が隣と斜め前にいるわけ……!?」


 座席表をもう一度よく見る。私の隣には【雉真 壱】、斜め前には【林田 大輝】と書かれていた。名前だけ見てもどんな人なのかはわからないけど、それでも名前を見ただけで気が重くなる。


「でもさ、これがきっかけで男の子苦手じゃなくなるかもしれないよ」

「……そんな、無理だよ」

「まぁ、こればっかりは仕方ないんじゃないかな? しかも一番前の子ってメガネだし、席交換はしてくれないよ。最初だし」


 仕方ないのはわかってる。どうやっても、どうにもならないことがあるのもわかってる。でも頭でわかっていても、気持ちはついてこない。

 花純は私の愚痴を、チャイムが鳴るまでずっと聞いてくれた。彼女が席に戻ったのと入れ替わるように、男の子たちが教室に入ってきて、それぞれ座席表を確認しながら席に着いた。

 私は窓の外に視線を向けて、できるだけ意識しないようにする。