「よし……顔の赤み、引いたよね?」
渡り廊下の窓ガラスに自分の顔を映し、両手でパンパンと頬を叩く。
よし、深呼吸。吸って、吐いて。
いつも通りの「ちょっと照れ気味な優愛」の仮面を被り、私はそーちゃんが待つ教室へと歩を進めた。
ガラガラ……と教室の引き戸を開けた瞬間。
「あ、ゆっちゃんお帰り!!」
教室の真ん中で、文字通り首を長くして待っていたそーちゃんが、目に見えるほどの幻の尻尾をブンブンと振りながら突進してきた。相変わらず誰もが見惚れる抜群のプロポーションと、少女漫画から飛び出してきたような王子様フェイス。
「遅くなってごめんね、そーちゃん。待たせちゃっ──」
「ううん、全然! ゆっちゃんを待ってる時間すら、優愛との思い出の一部だから実質デートだし! それより用事、無事に終わった? 誰かに変なことされなかった? もし男に話しかけられてたら、俺そいつの記憶消去する魔法習得しに旅に出るところだったんだけど」
「大げさだなぁ、もう! 先生にプリント頼まれただけだよ」
ふふ、と苦笑いしながら、私は自分の机に残していたスクールバッグを肩にかける。
今日の学校はこれで終わり。
つまり、ここからは下校という名の「2人きりの時間」が始まるのだ。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん! ……あ、そうだ。優愛、帰る前にちょっとだけ、屋上に寄ってもいい?」
「え? 屋上に?」
普段は鍵がかかっているはずの屋上だけど、そーちゃんは人当たりが良すぎて、なぜか先生から時々鍵を預かる係を任されている。
手渡された鍵を器用に指先でくるくると回しながら、そーちゃんは少しだけ声を潜めて、いたずらっぽく微笑んだ。
「ほら、さっきお昼休みに『2人きりになれる場所行きたい』って言ったでしょ? 俺、有言実行するタイプの男だから。……だめ、かな?」
上目遣いで、きゅるんとした犬のような瞳で見つめられる。
そんな顔、ずるい。断れるわけがないじゃん……!!
「……ちょっとだけ、だよ?」
「やった! さすが俺の天使、世界一優しい!」
嬉しそうに私の手をきゅっと握るそーちゃん。
学校の廊下だから、誰かに見られるかもしれない。
そう思って少し身を縮ませる私を気遣うように、そーちゃんは誰もいない階段の踊り場に入った瞬間、さらに強く、指を絡めてきた。
渡り廊下の窓ガラスに自分の顔を映し、両手でパンパンと頬を叩く。
よし、深呼吸。吸って、吐いて。
いつも通りの「ちょっと照れ気味な優愛」の仮面を被り、私はそーちゃんが待つ教室へと歩を進めた。
ガラガラ……と教室の引き戸を開けた瞬間。
「あ、ゆっちゃんお帰り!!」
教室の真ん中で、文字通り首を長くして待っていたそーちゃんが、目に見えるほどの幻の尻尾をブンブンと振りながら突進してきた。相変わらず誰もが見惚れる抜群のプロポーションと、少女漫画から飛び出してきたような王子様フェイス。
「遅くなってごめんね、そーちゃん。待たせちゃっ──」
「ううん、全然! ゆっちゃんを待ってる時間すら、優愛との思い出の一部だから実質デートだし! それより用事、無事に終わった? 誰かに変なことされなかった? もし男に話しかけられてたら、俺そいつの記憶消去する魔法習得しに旅に出るところだったんだけど」
「大げさだなぁ、もう! 先生にプリント頼まれただけだよ」
ふふ、と苦笑いしながら、私は自分の机に残していたスクールバッグを肩にかける。
今日の学校はこれで終わり。
つまり、ここからは下校という名の「2人きりの時間」が始まるのだ。
「じゃあ、帰ろっか」
「うん! ……あ、そうだ。優愛、帰る前にちょっとだけ、屋上に寄ってもいい?」
「え? 屋上に?」
普段は鍵がかかっているはずの屋上だけど、そーちゃんは人当たりが良すぎて、なぜか先生から時々鍵を預かる係を任されている。
手渡された鍵を器用に指先でくるくると回しながら、そーちゃんは少しだけ声を潜めて、いたずらっぽく微笑んだ。
「ほら、さっきお昼休みに『2人きりになれる場所行きたい』って言ったでしょ? 俺、有言実行するタイプの男だから。……だめ、かな?」
上目遣いで、きゅるんとした犬のような瞳で見つめられる。
そんな顔、ずるい。断れるわけがないじゃん……!!
「……ちょっとだけ、だよ?」
「やった! さすが俺の天使、世界一優しい!」
嬉しそうに私の手をきゅっと握るそーちゃん。
学校の廊下だから、誰かに見られるかもしれない。
そう思って少し身を縮ませる私を気遣うように、そーちゃんは誰もいない階段の踊り場に入った瞬間、さらに強く、指を絡めてきた。



