そーちゃんの溺愛が止まらない⁉ ~今日も世界一可愛い君へ、ご褒美ハグを10秒だけ。~

2月14日、バレンタインデー。
学校の廊下は、朝からそわそわした空気と、どこか甘いチョコレートの香りに包まれていた。
当然、我が彼氏であるモテモテ王子様・そーちゃんの机の周りには、朝から「これ、いつもお世話になってるから!」と、義理や友情、あるいは一縷の望みをかけた女子たちからのチョコ(と、それを牽制するそーちゃんの「俺、優愛のチョコ以外はアレルギー出るから」というお決まりの鉄壁バリア)で、ちょっとした人だかりができていた。
だけど、私のバッグの中には、それらとは一線を画す「本物の本命」が眠っている。
ど、どうしよう……。何日も前から練習して、昨日なんて夜中の2時までかかって作ったトリュフショコラ……。ちゃんと美味しくできてるかな……っ。
心の中の限界オタクが「緊張で心臓がスクラップになりそう!!」と大暴れしている。
おまけに、首元にはあの誕生日にそーちゃんから貰ったピンクゴールドのネックレスが、私の胸元でトクトクと速い鼓動を刻んでいた。


「──ゆっちゃん、お待たせ!」
放課後、いつもの校舎裏の渡り廊下。
誰もいない静かな空間に、そーちゃんが息を切らせて駆け込んできた。
クラスでの鉄壁モードとは打って変わり、私を前にしたそーちゃんは、すでに幻の尻尾をちぎれんばかりにブンブンと振っている。
「ごめんね、優愛。最後の最後まで変な男が優愛に近づかないか見張ってたら遅くなっちゃった。……あ、もしかして、それって……っ!」
そーちゃんの視線が、私の手が隠すように持っていた小さなラッピング袋に釘付けになる。
「う、うん。これ……そーちゃんに。……いつも、すっごく優しくしてくれて、大切にしてくれるから。……その、本命、チョコ、です……っ」
顔が爆発しそうに熱くなるのを堪えながら、両手で袋を差し出す。
すると、そーちゃんは袋を受け取ったまま、まるで世界で一番壊れやすい宝石を渡されたかのように、その場にガタガタと震えながら崩れ落ちてしまった。
「そ、そーちゃん!? また気絶しかけてる!?」
「ち、違うんだ優愛……。優愛の手作り本命チョコ……。しかも、ラッピングのリボンが、俺がプレゼントしたネックレスと同じピンクゴールド……。無理、愛が深すぎて全脳細胞が歓喜の涙で溺死しそう。これ、もったいなくて一生食べられないから、防腐処理して我が家の神棚に奉るね!?」
「食べてよぉ!! 賞味期限あるから!!」
真っ赤になりながらツッコミを入れると、そーちゃんは愛おしそうにチョコを抱きしめたまま立ち上がり、私の正面に回り込んで、じっと私の目を見つめてきた。
いつもの暴走ワンコじゃない。
修学旅行の夜や、初詣のシェアマフラーの時に見せた、真剣で、熱を帯びた「男の子」の瞳だ。
「優愛。俺さ、今日ここできちんと誓いたいんだ」
「え……?」
そーちゃんは、繋いでいない方の手を私の耳元にそっと添えると、周りの空気を溶かすような優しい声で語りかけてきた。
「俺たちの高校生活も、もうすぐ終わり。春からは大学生になって、お互いに新しい世界が広がる。だけどね、俺の未来の特等席には、これからも、10年後も、50年後も、ずーーーっと優愛しか座らせない。俺は、優愛を世界一、宇宙一幸せにするために生きていく。……だから、ずっと俺の隣にいて。俺のこの誓い、受け取ってくれる?」
夕暮れのオレンジ色の光が、渡り廊下の窓から差し込み、そーちゃんの綺麗なシルエットを縁取る。
ずるい。こんなの、断れるわけがないじゃん……!!
直接甘えることが苦手だったはずの私が、そーちゃんの真っ直ぐな言葉に背中を押されるように、今度は1ミリも躊躇わずに一歩を踏み出した。
トスン、とそーちゃんの広い胸に自分から飛び込み、その背中に強く、ぎゅーーーっと腕を回した。
「っ……、優愛……っ!」
「受け取る……っ。受け取るに決まってるじゃん……! 私だって、そーちゃんが世界で一番、宇宙で一番大好きなんだから……っ。だから、ずっと、ずーーーっと、離さないでね……?」
私の精一杯の、そして過去最大の「直接の甘えと告白」。
それを聞いた瞬間、世界が反転した。
「……っっ、ありがと、ゆっちゃん……!!」
次の瞬間、私の体がふわりと浮き上がるような強い力で、だけどこの世の何よりも大切なものを抱きしめるように、そーちゃんの大きな腕が私を完全にホールドした。
ドクドクドクドクと、信じられないくらい速いそーちゃんの鼓動が、私の胸にダイレクトに響いてくる。
「やばい、嬉しすぎて本当に明日地球が滅亡するかもしれない。っていうか、可愛いすぎて無理、絶対に離さない。あと100億秒延長してこのまま3月まで抱きしめてていい!?」
「だから3月までは長すぎっ!!  あと、1ヶ月くらいあるじゃん!!! ほら、そーちゃん、チョコ潰れちゃうから……っ(笑)」
呆れ半分、だけど愛しさ無限大。
私の「ダメ」は、やっぱりそーちゃんの脳内で「もっと強く愛して」に自動変換されたみたいで、私たちは冷たいはずの冬の廊下で、お互いの体温と特大の愛を確かめ合うように、ずーーーっと抱きしめ合っていたのだった。

幸せすぎて、明日も、その先の未来も、何も怖くない。
手作りの甘いチョコと、そーちゃんの甘すぎる誓いを胸に、私たちの恋は、いよいよ最高のフィナーレ(卒業式)へと突き進んでいく──。