「──さむッ……!!」
元日の早朝。
神社の鳥居をくぐった瞬間、思わず身震いしてしまった。
今日はそーちゃんと初詣に行くお約束の日。
冷え込みが厳しいとは思っていたけれど、空を見上げると、なんと小さな粉雪がチラチラと舞い降りてきている。
「あ、ゆっちゃん! こっちこっち!」
人混みの向こうから、大きく手を振る人影が見えた。
私がお誕生日にプレゼントしたネイビーのロングコートを着こなしたそーちゃんだ。
マフラーに顔を半分うずめているけれど、その少女漫画から飛び出してきたような王子様フェイスは、雪の中でも圧倒的なオーラを放っている。
周りの参拝客の女の子たちが「え、あの人カッコよくない!?」と色めき立っているのが、遠目からでもハッキリ分かった。
「お待たせ、そーちゃん! 寒いのに待たせちゃってごめんね」
「……ッッッ!!!!(激しい硬直)」
振り返ったそーちゃんは、案の定、まばたきすら忘れた顔で私を凝視し、そのままドラマのワンシーンみたいに両手で顔を覆って神社の木に頭をコツンとぶつけた。
「そ、そーちゃん!? 年始早々どうしたの!?」
「ち、違うんだ優愛……。白い息を吐きながらトコトコ歩いてくる優愛が、雪の妖精か本物の天使にしか見えなくて、俺の網膜が初日の出より眩しさで焼き切れそう。無理、尊い、今すぐ俺のポケットに入れてお持ち帰りしたい……」
「もう! 元日の朝から通常運転なんだからっ(笑)」
真っ赤になりながら苦笑いしていると、そーちゃんは待ってましたと言わんばかりに、私の手をガシッと恋人繋ぎでロックした。
コートのポケットの中で繋がれたそーちゃんの手は、驚くほど温かくて、それだけで寒さが一気に吹き飛んでいく。
お賽銭を投げ入れ、2人で並んで手を合わせる。
今年も、そーちゃんとずっと一緒にいられますように……!
そう心の中で強く願い、目を開けると、隣のそーちゃんはまだ真剣な顔で、めちゃくちゃ長く手を合わせ続けていた。
「……よし。神様への直訴完了!」
「ふふ、そーちゃん、何をそんなにお願いしてたの?」
「ん? 『優愛と結婚して一生幸せにしますので、とりあえず2人の婚姻届の提出まで世界の平和を維持してください』って3回唱えてた」
「スケールが大きすぎるよっ!!」
呆れ半分、だけど愛しさ無限大。
そんなおみくじを引き終えて境内を歩いていると、急に風が強くなり、雪の勢いが増してきた。
「うわ、本格的に降ってきたね。優愛、寒くない? ほら、お耳が赤くなってる……」
「大丈夫だよ。そーちゃんと手を繋いでるから暖かいもん」
何気なくそう言った瞬間、そーちゃんの瞳がカッと熱を帯びた。
「っ……! 優愛、それ、俺を萌え死にさせる暗殺計画の一環かなにか!?」と叫びながら、そーちゃんは自分が巻いていた長くて厚手のマフラーをパッと外した。
「え、そーちゃん? それじゃあそーちゃんが寒く──」
言いかけるより早く、そーちゃんは外したマフラーを私の首に優しく巻きつけた。
そして、そのマフラーのもう片方の端を、自分の首にもくるりと巻き直したのだ。
「……あ」
いわゆる、1つのマフラーを2人で巻く、憧れの『シェアマフラー』。
当然、2人の距離は肩がぴったりぶつかるどころか、顔が数センチの距離にまで近づくことになる。
マフラーからは、お誕生日と同じ、そーちゃんの爽やかなシトラスの香りと、彼自身の温かい体温の匂いが特濃で漂ってきた。
「これなら、2人とも暖かいでしょ?」
至近距離で、そーちゃんの少しトーンの下がった低い声が鼓膜を震わせる。
見上げると、雪の結晶がまつ毛に止まったそーちゃんが、悪戯っぽく、だけど男の子らしい熱を含んだ瞳で私を見つめていた。
周りにはたくさんの参拝客がいる。
だけど、この白いマフラーに包まれた空間だけは、完全に2人だけの世界だった。
心の中の限界オタクが「年始から糖度2000%の奇跡が起きたーーー!!!」と大号泣しながら大暴れしている。
私は embarrassment(恥ずかしさ)で爆発しそうな心臓を必死に抑え、マフラーの中に顔を半分うずめながら、蚊の鳴くような声で呟いた。
「……うん。すっごく、暖かい。……ねえ、そーちゃん」
「なあに、ゆっちゃん」
「今年も……その、よろしく、ね? 大好きだよ」
新年の挨拶に、どさくさに紛れて「大好き」を混ぜてみる。
自分で言っておいて顔が火傷しそうに熱くなった瞬間──世界が反転した。
「……っっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!(限界突破の悶絶)」
次の瞬間、マフラー越しに、そーちゃんの大きな腕が私の体をぎゅううううっと抱きしめた。
ドクドクドクドクと、信じられないくらい速いそーちゃんの鼓動が、私の胸にダイレクトに響いてくる。
「無理無理無理可愛すぎて無理!!! 新年早々こんなご褒美貰えるなんて、俺、本当に今年中に地球を救う義務があるかもしれない!!! 優愛、愛してる、今年も来年も100年後もずっと俺だけの天使でいてね!?」
「だから声が大きいってばぁ……っ(笑)」
私の「ダメ」は、やっぱりそーちゃんの脳内で「もっと密着して」に自動変換されたみたいで、結局私たちがマフラーをほどいて歩き出したのは、雪が少し弱まってからのことだった。
幸せすぎて、これからの1年が、そしてその先の未来が楽しみで仕方ない。
白い雪が街を美しく染める中、私たちは1つのマフラーで繋がったまま、世界一甘い新年の第一歩を踏み出したのだった。
元日の早朝。
神社の鳥居をくぐった瞬間、思わず身震いしてしまった。
今日はそーちゃんと初詣に行くお約束の日。
冷え込みが厳しいとは思っていたけれど、空を見上げると、なんと小さな粉雪がチラチラと舞い降りてきている。
「あ、ゆっちゃん! こっちこっち!」
人混みの向こうから、大きく手を振る人影が見えた。
私がお誕生日にプレゼントしたネイビーのロングコートを着こなしたそーちゃんだ。
マフラーに顔を半分うずめているけれど、その少女漫画から飛び出してきたような王子様フェイスは、雪の中でも圧倒的なオーラを放っている。
周りの参拝客の女の子たちが「え、あの人カッコよくない!?」と色めき立っているのが、遠目からでもハッキリ分かった。
「お待たせ、そーちゃん! 寒いのに待たせちゃってごめんね」
「……ッッッ!!!!(激しい硬直)」
振り返ったそーちゃんは、案の定、まばたきすら忘れた顔で私を凝視し、そのままドラマのワンシーンみたいに両手で顔を覆って神社の木に頭をコツンとぶつけた。
「そ、そーちゃん!? 年始早々どうしたの!?」
「ち、違うんだ優愛……。白い息を吐きながらトコトコ歩いてくる優愛が、雪の妖精か本物の天使にしか見えなくて、俺の網膜が初日の出より眩しさで焼き切れそう。無理、尊い、今すぐ俺のポケットに入れてお持ち帰りしたい……」
「もう! 元日の朝から通常運転なんだからっ(笑)」
真っ赤になりながら苦笑いしていると、そーちゃんは待ってましたと言わんばかりに、私の手をガシッと恋人繋ぎでロックした。
コートのポケットの中で繋がれたそーちゃんの手は、驚くほど温かくて、それだけで寒さが一気に吹き飛んでいく。
お賽銭を投げ入れ、2人で並んで手を合わせる。
今年も、そーちゃんとずっと一緒にいられますように……!
そう心の中で強く願い、目を開けると、隣のそーちゃんはまだ真剣な顔で、めちゃくちゃ長く手を合わせ続けていた。
「……よし。神様への直訴完了!」
「ふふ、そーちゃん、何をそんなにお願いしてたの?」
「ん? 『優愛と結婚して一生幸せにしますので、とりあえず2人の婚姻届の提出まで世界の平和を維持してください』って3回唱えてた」
「スケールが大きすぎるよっ!!」
呆れ半分、だけど愛しさ無限大。
そんなおみくじを引き終えて境内を歩いていると、急に風が強くなり、雪の勢いが増してきた。
「うわ、本格的に降ってきたね。優愛、寒くない? ほら、お耳が赤くなってる……」
「大丈夫だよ。そーちゃんと手を繋いでるから暖かいもん」
何気なくそう言った瞬間、そーちゃんの瞳がカッと熱を帯びた。
「っ……! 優愛、それ、俺を萌え死にさせる暗殺計画の一環かなにか!?」と叫びながら、そーちゃんは自分が巻いていた長くて厚手のマフラーをパッと外した。
「え、そーちゃん? それじゃあそーちゃんが寒く──」
言いかけるより早く、そーちゃんは外したマフラーを私の首に優しく巻きつけた。
そして、そのマフラーのもう片方の端を、自分の首にもくるりと巻き直したのだ。
「……あ」
いわゆる、1つのマフラーを2人で巻く、憧れの『シェアマフラー』。
当然、2人の距離は肩がぴったりぶつかるどころか、顔が数センチの距離にまで近づくことになる。
マフラーからは、お誕生日と同じ、そーちゃんの爽やかなシトラスの香りと、彼自身の温かい体温の匂いが特濃で漂ってきた。
「これなら、2人とも暖かいでしょ?」
至近距離で、そーちゃんの少しトーンの下がった低い声が鼓膜を震わせる。
見上げると、雪の結晶がまつ毛に止まったそーちゃんが、悪戯っぽく、だけど男の子らしい熱を含んだ瞳で私を見つめていた。
周りにはたくさんの参拝客がいる。
だけど、この白いマフラーに包まれた空間だけは、完全に2人だけの世界だった。
心の中の限界オタクが「年始から糖度2000%の奇跡が起きたーーー!!!」と大号泣しながら大暴れしている。
私は embarrassment(恥ずかしさ)で爆発しそうな心臓を必死に抑え、マフラーの中に顔を半分うずめながら、蚊の鳴くような声で呟いた。
「……うん。すっごく、暖かい。……ねえ、そーちゃん」
「なあに、ゆっちゃん」
「今年も……その、よろしく、ね? 大好きだよ」
新年の挨拶に、どさくさに紛れて「大好き」を混ぜてみる。
自分で言っておいて顔が火傷しそうに熱くなった瞬間──世界が反転した。
「……っっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!!!(限界突破の悶絶)」
次の瞬間、マフラー越しに、そーちゃんの大きな腕が私の体をぎゅううううっと抱きしめた。
ドクドクドクドクと、信じられないくらい速いそーちゃんの鼓動が、私の胸にダイレクトに響いてくる。
「無理無理無理可愛すぎて無理!!! 新年早々こんなご褒美貰えるなんて、俺、本当に今年中に地球を救う義務があるかもしれない!!! 優愛、愛してる、今年も来年も100年後もずっと俺だけの天使でいてね!?」
「だから声が大きいってばぁ……っ(笑)」
私の「ダメ」は、やっぱりそーちゃんの脳内で「もっと密着して」に自動変換されたみたいで、結局私たちがマフラーをほどいて歩き出したのは、雪が少し弱まってからのことだった。
幸せすぎて、これからの1年が、そしてその先の未来が楽しみで仕方ない。
白い雪が街を美しく染める中、私たちは1つのマフラーで繋がったまま、世界一甘い新年の第一歩を踏み出したのだった。



