リリィside
「──様!リリィ様!到着しましたよ!」
……うーん……うるさいよぉ……。
誰かが私の肩を揺らし、重たい瞼を開くと目の前には呆れた顔をするメイドのルリがいる。
「んー……ルリ……?」
眠たい目を擦りながら馬車の窓に目を向けると、そこにはきらびやかな夜会の会場が広がっていた。
「はぁ……リリィ様、そんなにお美しいお姿をされているのに、なんて姿を晒しているのですか……。馬車を降りる前にドレスも髪も綺麗に直しましょう」
その言葉に視線を下げると、寝相が悪かったせいでドレスには複数のシワがよっており、めくれ上がった裾からは私の足が丸見えだ。
「……えへへっ、寝相だけは中々なおらなくて……ごめんね?」
ルリがせっかく用意してくれた綺麗なドレスにシワを作ってしまって気まずく笑っていると、ピシャリとルリが注意をする。
「そもそも夜会に向かう馬車で眠るのは、お辞め下さい」
こんな風にルリはいつも怒っているけれど、いつだって呆れながらもずっと一緒にいてくれる、とても優しい私の専属メイド。
ブツブツと文句を言いながらも、私のドレスや髪の毛をさっと綺麗になおしていく手際は流石なものだ。
「できましたよ、お嬢様」
ルリの声に自分のドレスに視線を移すと、屋敷を出た時と変わらないシワひとつ無い綺麗なドレスに戻っていた。
私は、ルリの前でクルリと回ってみせる。
「わぁーっ!綺麗になってる!流石ルリねっ!ありがとう!!」
「はぁ……リリィ様のお直しはいつものこと──「ぐぅ~……」
すると、ルリの言葉を遮るように、私のお腹の音が元気よく鳴り響いた。
「あ、あははっ……さ、さてと!!ルリ!!今日も沢山食べようねっ!なんだか眠ったらお腹すいてきちゃった〜っ!た、楽しみだよね〜っ?!」
慌てる私の様子に呆れた顔をしたルリは、小さくため息を吐いて馬車の扉を開いた。
「はぁ……そうですね。では、参りましょうか」



