そして、暫く楽しそうにお父様と会話を続けていたギル様が、少しだけ真剣な声色でお父様に「少しよろしいですか?」と尋ねる声が聞こえてきてた私は、再び二人に視線を戻した。
すると、目の前の悪魔は、とてつもなく嫌な予感を感じさせる事を口にするのだ。
「ロゼッタ侯爵、今回は突然の訪問で驚かせてしまい申し訳ございません。私が今回ここに訪れた理由なんですが……実は、リリィ嬢にお願いがありまして……」
そう言ってお父様の前では完璧な猫をかぶる礼儀正しいギル様は、少しだけ眉を寄せて困っている様な素振りを見せる。
「ほぉ……公爵様がうちのお転婆娘にお願い……ですか?」
するとギル様は、そっと私に近寄るとお父様に聞こえない小さな声で囁いた。
「次回の夜会でお前に俺のパートナーを頼みたい……断ったりしないよな?……前回の件、とても騒ぎになっている」
「……へっ……?」
こ、この人……もしかして私を脅している?!
公爵のギル様を池に突き落とした令嬢とバレれば、きっと大変なことになるのは間違いない。そうなれば、きっと私の自由な生活は……完全に終わる。
そんなことを考えている間に、ギル様は私からスっとお父様に向きなおった。
「ロゼッタ侯爵、次回の夜会でリリィ嬢には私のパートナーをお願いしたいのですが……どうでしょうか?」
先程まで私を脅していたとは思えないほど、控えめな口調と態度でお父様に接するギル様。
「おぉ!!!うちの娘が公爵様のパートナー?!とても光栄ですなぁ!あっ……ですが……うちのリリィに公爵様のパートナーが務まるでしょうか?」
お父様は私に視線を向けると、とても心配そうな顔をして悩んでいる様子だった。
そりゃそうだ、私は普段お転婆すぎて屋敷のみんなを困らせてばかりいる……心配されるのは少し心外だけれど、いつもの自分のお転婆さにこの時ばかりは感謝した。
ギル様、残念だけれど……無理そうね?うふふっ!



