彼女に会えなかった俺は、そのままロゼッタ侯爵に連れられ雑談を交えながら侯爵邸の庭園を散歩している。
リリィの情報を少しでも手に入れたい俺は、ロゼッタ公爵に彼女の話を振ってみると、娘を溺愛しているという噂は本当のようで隣で嬉しそうにリリィの話を始めた。
リリィの話はとてもだが侯爵令嬢とは思えないほどのお転婆ぶりで、興味深く話を聞いていると、どこからか騒がしい声が響いてくる。
切れ切れに聞こえてくる女性の声に、もしかしたら……とリリィのことが頭をよぎった俺は、隣で楽しそうに娘の溺愛話に花を咲かせる侯爵の話から、そっとその騒がしさに耳を傾けた。
すると──聞き覚えのある声と名前が聞こえてくる。
「やだやだやだ!私は絶対に行かないからね!」
「リリィ様!お願いですから、ご準備をお願いしますっ!ギル様がお待ちしているんですよっ!!」
これは……リリィとメイドの声?俺の予想は見事的中のようだ。
俺は隣のロゼッタ侯爵の話より、二人の会話のが断然面白くて、そのままそのやり取りに耳を傾け続けた。
「あの人わざわざ屋敷まで来るなんて、私の事すごく怒ってるんじゃない?!私が悪いけど怖いの!本当に無理!私は逃げるんだから!!」
「あ!!リリィ様!おやめください!!!!ここは三階ですよ!!」
最後にそんなやり取りが聞こえた俺は、次に起きることを瞬時に察知した。
まさか……また飛び降りる気か……?あのお転婆なら……やりかねない。
必ずリリィが現れると予想した俺は、すぐに行動に移す。
ロゼッタ侯爵に「少しだけ花壇を近くでよく見たい」と適当なことを言うと、すぐに許しを貰い、声の聞こえた窓の元へと俺は急いで向かった。
窓の下へと向かう途中、これは物凄くチャンスではないかと気づいた俺の口角は、走りながら無意識にあがっていく。
……こんな絶好のチャンスをこの俺が逃すと思うか?逃げられると思うなよ、リリィ。



