ギルside
───彼女のせいで、俺はびしょ濡れだと言うのに、そんな事は全て忘れてしまったかのように楽しそうな声色で彼女は俺に手を差し伸べる。
「はい!お手をどうぞ!」
俺は目の前で起こった全ての出来事に、未だに頭が追いつかなくて驚きを隠せないでいた。
「……あ、あぁ、ありがとう」
「どーいたしましてっ!」
とりあえず差し出された手を握り返し、改めて彼女の姿をよく見てみると──下着姿でびしょ濡れ、泥だらけで酷く汚れた顔と髪の毛。
この世は、常に美しく着飾り何を考えているか分からない笑顔を浮かべる令嬢ばかり。
そして、それは俺も同じだ。
けれど、目の前の彼女は自分の姿なんて気にもせず、子猫を助けるためだけに池に飛び込みドロドロになった姿で、とても嬉しそうに笑顔を咲かせている。
顔は泥だらけでよく分からないというのに、無邪気に笑う彼女はとても魅力的で、まぶしい太陽のように見えた。
俺の目の前で裏表のない純粋な笑顔を向ける彼女に、今までに感じたことがないほど胸が熱く高鳴る。
──そう、俺は今日顔も名前も分からない彼女に恋をした。
⟡.·
そしてこの後、事情を知ったルリはめちゃくちゃギルに謝るのだった。



