『恋愛ってなんですか?』


 急いで階段を降りて、靴に履き替える。
 勢いを緩めることなく校門を走り抜けて、駅に向かって走る。

 千雅が少し前に出たって言ってたから、まだ走れば会えるかな……っ。
 
 息を切らしながら走る。
 動くたびに鞄が揺れて邪魔に感じる。
 
「っ……」
 
 なかなか朔は見つからない。
 まさかもう電車に——お願い、まだ近くにいて。
 
 そんなことを考えながら必死に走る。

 綺麗な街路樹を抜けて、駅まであと少し。
 先に見覚えのある背中が見えた。

「朔!!」

 いた。間に合った。

「っ……はぁ……」

 ゆっくりと走る勢いを落とし、息を整える。

「遥?」

 朔は私を見つめる。
 間に静寂が流れ、聞こえるのは私の息と鼓動だけ。
 緊張する。
 言葉が出ない。
 ダメ、逃げるな私。

「朔!」

「私、朔のことが好きみたい……」

「じゃなくて、好きで……」

 自分の気持ちをはっきりと伝えたいのに、上手く言えない。

「だから……その……」

 こんな時まで私は……っ。自分がもどかしい。
 私が上手く言えずにいると朔が先に言った。



「俺も、遥が好きだ。」



 真っ直ぐ私と目を合わせて、朔は私に言ったんだ。



「だから」



 
「俺と付き合ってください。」





 あぁ。
 始業式の日、あの夢を見る前までは。
 朔と出会う前までは。
 この気持ちを知らなかった私は、きっとこう言っていただろう。

 朔の隣に並んで歩く。
 横を向くと、好きな人と目が合う。
 気づけば頬がゆるんでいた。




 ――――『恋愛ってなんですか?』――――


 完