——「ずっと、ずっと前から、遥の事だけが好きなんだ。」
——「……あぁ。」「気付いた時には遥を好きだった」
「〜〜〜〜〜〜っ」
ベッドで寝ようとしても、二人の言葉が離れない。
どちらを選ばなくても今が変わってしまうことは決定事項で。
どちらかを選んでも、どちらかが傷つく。
誰も傷つかずに、全てがうまくいくことなんてない。わかってるのに。
「……臆病者……意気地なし……」
誰もいない自分の部屋で一人呟く。
自分の気持ちと向き合う。そう決めてずっと考えてる。
なのに答えは出なくて、何度も考えては決めきれずに悩む。
自分の気持ちがどこを向いているのかは気付いているのに。
考えても答えの出せない自分に嫌気がさしてくる。
「あ゛ーもう!」
近くに置いてあった肉まん型のクッションに顔を強く押し付ける。
何か飲もう。そう思って自室を出ると、扉のそばからすぐ見える玄関に見覚えのある靴を見つけた。
……今日来るなんて言ってたっけ……。
自分の記憶を思い出しながらリビングへと続く廊下を進み、扉を開ける。そこには、いつもはいない人が居た。
「お母さん、今日帰る予定だっけ?」
母はキャリーケースと大きなボストンバッグを床に置き、荷解きをしている。
まさか。
「何、別れたの?」
「……まだ別れてはないよ」
「まだ?」
「喧嘩中なの」
「あ……そう」
数年に一回はやってくるこの流れ。私は何度も経験していた。
大体はこのまま別れるか、仲直りしてまた戻るか。今の人は何年続いていたかな……。
「何年目だっけ?付き合ってから」
「二年目かな。遥の高校入学と同時に前の人と別れてるから」
二年……微妙だけど、別れると落ち込んで過干渉が酷くなりそう。めんどくさいから仲直りをしてほしい、なんて酷いことを考えてしまう。
こういうところは家族だとしても割り切らないと。自分が被害を受ける。……私はそう学んだ。
「……なんで喧嘩したの?」
「だってお皿洗うスポンジでそのまま排水溝とかまで洗い出すのよ?!信じられない!それを言ったらすごい嫌な顔して『毎日掃除してるんだから綺麗だよ』って。私が口うるさいみたいに!」
それは確かに私も嫌だけど……。
でも、彼氏の家に住み込んでやり方に口を出して嫌な顔をされるのは、同棲しようと話して始めた暮らしではないのだから当たり前では?とも思ってしまう。
人の家にはそれぞれその人のやり方があるのは良くわかる。
嫌な顔を露骨にしたのは良くなかったのかもしれないけれど。
「それだけじゃないんだよ?!この前なんて——」
泉のように湧き出る愚痴に黙って付き合う。
母の愚痴を聞く度に、そんなに愚痴が溜まるのにどうして一緒にいるのかと思ってしまう。父の時だって……。
好きになって一緒になっても、いつかこうなってしまうのなら、やっぱり友達のままのほうが傷付かなくていいのかもしれない。
「それだけ愚痴も溜まるのに、なんで誰かと付き合おうって思うの?離婚もしてて、付き合っても先がうまくいかないかもとか思わないの?」
母にこんなことを言うのは初めてだった。
母の恋愛に関心すらなかった私が初めて母に疑問をぶつける。
私の言葉に母は驚いていた。
母は動きを止め、私の言葉の意味を考えているようだった。
「うーん」と、頭も捻り出す。
「……付き合った後のこととか、考えて恋人になったことはあまりないかな。……喧嘩もするけど一緒にいてとても楽しいし。彼が自分じゃない誰かと居るのが耐えられなかったから、かな。それとは関係なく、私にとって一番大切なのは遥と大和よ。それは絶対に変わらないからね。」
その言葉に思うところは色々あったけど。
『彼が自分じゃない誰かと居るのが耐えられなかったから』
母の言葉が、胸の奥でゆっくり沈んでいく。
私は……。
母と会話を終え、私はまた部屋のベッドに転がり込んだ。
——「……あぁ。」「気付いた時には遥を好きだった」
「〜〜〜〜〜〜っ」
ベッドで寝ようとしても、二人の言葉が離れない。
どちらを選ばなくても今が変わってしまうことは決定事項で。
どちらかを選んでも、どちらかが傷つく。
誰も傷つかずに、全てがうまくいくことなんてない。わかってるのに。
「……臆病者……意気地なし……」
誰もいない自分の部屋で一人呟く。
自分の気持ちと向き合う。そう決めてずっと考えてる。
なのに答えは出なくて、何度も考えては決めきれずに悩む。
自分の気持ちがどこを向いているのかは気付いているのに。
考えても答えの出せない自分に嫌気がさしてくる。
「あ゛ーもう!」
近くに置いてあった肉まん型のクッションに顔を強く押し付ける。
何か飲もう。そう思って自室を出ると、扉のそばからすぐ見える玄関に見覚えのある靴を見つけた。
……今日来るなんて言ってたっけ……。
自分の記憶を思い出しながらリビングへと続く廊下を進み、扉を開ける。そこには、いつもはいない人が居た。
「お母さん、今日帰る予定だっけ?」
母はキャリーケースと大きなボストンバッグを床に置き、荷解きをしている。
まさか。
「何、別れたの?」
「……まだ別れてはないよ」
「まだ?」
「喧嘩中なの」
「あ……そう」
数年に一回はやってくるこの流れ。私は何度も経験していた。
大体はこのまま別れるか、仲直りしてまた戻るか。今の人は何年続いていたかな……。
「何年目だっけ?付き合ってから」
「二年目かな。遥の高校入学と同時に前の人と別れてるから」
二年……微妙だけど、別れると落ち込んで過干渉が酷くなりそう。めんどくさいから仲直りをしてほしい、なんて酷いことを考えてしまう。
こういうところは家族だとしても割り切らないと。自分が被害を受ける。……私はそう学んだ。
「……なんで喧嘩したの?」
「だってお皿洗うスポンジでそのまま排水溝とかまで洗い出すのよ?!信じられない!それを言ったらすごい嫌な顔して『毎日掃除してるんだから綺麗だよ』って。私が口うるさいみたいに!」
それは確かに私も嫌だけど……。
でも、彼氏の家に住み込んでやり方に口を出して嫌な顔をされるのは、同棲しようと話して始めた暮らしではないのだから当たり前では?とも思ってしまう。
人の家にはそれぞれその人のやり方があるのは良くわかる。
嫌な顔を露骨にしたのは良くなかったのかもしれないけれど。
「それだけじゃないんだよ?!この前なんて——」
泉のように湧き出る愚痴に黙って付き合う。
母の愚痴を聞く度に、そんなに愚痴が溜まるのにどうして一緒にいるのかと思ってしまう。父の時だって……。
好きになって一緒になっても、いつかこうなってしまうのなら、やっぱり友達のままのほうが傷付かなくていいのかもしれない。
「それだけ愚痴も溜まるのに、なんで誰かと付き合おうって思うの?離婚もしてて、付き合っても先がうまくいかないかもとか思わないの?」
母にこんなことを言うのは初めてだった。
母の恋愛に関心すらなかった私が初めて母に疑問をぶつける。
私の言葉に母は驚いていた。
母は動きを止め、私の言葉の意味を考えているようだった。
「うーん」と、頭も捻り出す。
「……付き合った後のこととか、考えて恋人になったことはあまりないかな。……喧嘩もするけど一緒にいてとても楽しいし。彼が自分じゃない誰かと居るのが耐えられなかったから、かな。それとは関係なく、私にとって一番大切なのは遥と大和よ。それは絶対に変わらないからね。」
その言葉に思うところは色々あったけど。
『彼が自分じゃない誰かと居るのが耐えられなかったから』
母の言葉が、胸の奥でゆっくり沈んでいく。
私は……。
母と会話を終え、私はまた部屋のベッドに転がり込んだ。


