朔と出かけた日から数日が経った。
休み明け、二年生になって初めての席替えが行われた。
他のクラスではすでに何度か行われていたのに、うちのクラス担任は生徒から催促がないことをいいことにずっとそのままだった。
他の先生からさすがに……と指摘があったらしく、渋々席替えを敢行。
結果、私はみんなから離れて望月先生のデスク最前となり、朔・千雅・葵・由乃・拓真は反対の廊下側に固まっていた。
タイミングが良かったと思うべきか、運がないと思うべきか。私以外の席が固まっていることに、若干の寂しさを感じる。
お昼休み。私は自分の机に頭を突っ伏し、体の力を抜いて唸る。
「ん゛んん……」
「佐藤」
クラス内は喋り声で騒がしく、朔や千雅達も各々の予定があり、私一人。
「佐藤遥さん?」
「……は゛い゛」
望月先生に呼ばれ、顔を上げる。
「お前……声ヤバいな」
「最近考え事多くて……寝られてねくて」
「『なくて』ね。席替えしてからずっと見てるけど顔やばいぞ」
知っていた。毎朝、鏡を見ると悩みすぎて酷い顔。寝不足のせいで肌も荒れていて辛い。
「何があったんだ?先生が聞いてあげるから話してみなさい」
「……珍しくモッチーが先生に見える」
「まぶたに油性ペンで目描くぞ」
「やめて……」
私は机に視線を落とし、望月先生に話す。
「モッチーは、誰かに告白されたことある?」
「これでも先生はモテるんだぞ。」
先生は腕を組み、気取った顔をする。
「そうですか……」
「もっと先生に興味を持て。で、何?佐伯と住田に告白でもされたか?」
——ガタンッ
椅子が後ろに下がり、音を立てる。
まだ何も言っていないのに核心をついてきた。
「……なんでそう思うの。」
「いや、あいつらお前のこと好きだろ。佐伯はわかりづらいけどお前に好意があるのは分かるし、住田に関してはそれを隠す気すらなさそうだからな」
先生ですら気づいていたのに……。
鈍いというかただのアホなんじゃないだろうか。
意識して気付かないようにしてたと言われても、仕方ない気がしてくる。
「……気づかず過ごし続けてきた人間がここにいました……。」
「マジかよ……それはもう鈍感とかのレベルじゃないぞ……」
その通りすぎてグハッ、と吐血しそう。
桶が頭に落ちてきた気分だ。
「いや、もう本当ごもっともで……」
机におでこが引き寄せられてピッタリくっつく。
「もうわかったんだろ?で、どうすんの?」
「……何となく、自分の気持ちは……。でも、変わっていく関係性というか変化のが怖くて。付き合って、何かあったらとか、振られた後のこととか……。その先を考えると怖いから、今のままでもいい気がして」
「ふーん……?」
自分では、どうすればいいのかわからない。
「どうしたらいいですかね……」
先生の椅子がギイッと軋む。
「まぁ、気持ちに答えたとしても、しなくても。今までと全く同じに過ごす事は無理だろ。あいつらはお前を好きなんだから。どっちを選んでもどっちかは傷つく。そういうもんだ。つまり、俺から言えるのはだな……頑張れ青春ってことだ。」
……。
途中までいい感じだったのに、最後の最後で適当に投げ出された気分だ。
「……途中までは先生ぽかったのに。」
「はっ?!俺はだな?!」
先生は「俺はお前が自分で答えを出せるのが一番と思って!」とか「ていうかぽいってなんだ!ぽいって!」だのその後もぎゃあぎゃあ言っていた。
先生なのにいつも友達と話しているみたいだ。
でも望月先生のおかげで、少しだけだけど。モヤモヤが薄くなった。


