私達はお互いに見たいものを交互に見て周ることにした。
朔は服を買いたいらしく、カジュアルでアクセントの効いたスタイルのショップに入る。
店内に並べられた服は男女問わず着こなせるユニセックスウェアが多い。
「……。」
「コート、悩んでるの?」
「あぁ、デザインがな。無地は使いやすい。でもチェックのコートは持ってない」
「どっちも朔なら似合いそうだけど……着回しするなら無地?」
「アクセント使いならチェックか。」
真剣に悩む朔。
その姿は雑誌の写真に出てきそうだった。
「朔って私服、オシャレだよね」
「そうか?」
「色使いとかも上手だし」
「父親がうるさいからな」
朔のお父さん、夏祭りの時に一緒に行きたいってごねてた記憶がある。
「朔の事が大好きなお父さん?」
朔の眉間に皺が刻まれていく。
不服そうな顔。
「……ファッション業界の仕事をしてるからか、そういうのにうるさい。勝手に服も買ってくるし、持ってくる」
納得だった。だから朔もこんなにオシャレなんだ。
それに比べて私は……普段の私はオシャレとは言えない。
「……。」
朔から離れてスマホを取り出し『オシャレ 始め方』と検索する。
雑誌、雑誌から読み始めたらいいのか……。
「遥?」
「朔、後で本屋行ってもいい?」
「?あぁ。」
頑張ったら、少しでも違和感なく隣に立てるだろうか?
この気持ちがなんなのか、私はまだ言葉にできない。
千雅のこともまだ答えが出せていない。
全てをはっきりさせることは、私にとって一番怖い変化だから。
——……
ショッピングモールのフードコート。昼時で席はすでに満席だった。
空いていたのはフードコートの端に配置されたカウンター席だけ。
端の椅子に朔と座る。
「人すごいね、カウンターだけど座れてよかった」
「そうだな」
「角だから人も少なくていいね」
〜♫
朔のポケットから着信音が聞こえる。
スマホを取り出し画面を見ると朔は椅子を立ち上がった。
「悪い、ちょっと電話してきていいか?」
「うん、ここで待ってるね」
朔はスマホを耳に当てて席から離れた。
何を食べようかな。スマホでフードコートの店舗を調べて昼食を吟味する。
「…………」
スマホの画面を見ると、もう二十分近く経っていた。
朔はまだ戻ってこない。
連絡してみるか悩み、朔が歩いて行った方向を見つめていると反対側から声をかけられる。
「こんにちは。一人?」
知らない男の人。
男性二人組は二十代か三十代に見える。少し危なそうな雰囲気に、スマホをぎゅっと掴む。
「いや、一人じゃないです……。」
「えー?でもさっきから見てたけど一人だったよね?」
朔のいない間に見られていたのか、私が嘘をついてると思っているみたいだった。
「さっき電話しに行って」
本当のことだった。
嘘なんてついてないのに。
話の通じなさそうな様子にこの場から逃げようと席を立つ。
「席、使いますか?それならどうぞ」
荷物を持って退こうとするが、男たちはさっきよりも近づいてきた。
「ほんとー?じゃあどこかで一緒にご飯でもしようよ。」
話を聞いていない。聞く気がないのか。
もっと強く言う?でも、刺激してしまいそうで怖い。
考えれば考える程、何も言えなくなってしまう。
私の肩を誰かが優しく抱いた。
「悪い、待たせた」
「……朔」
そっと私の背後に立ち、肩をそっと抱き寄せる。
「……彼氏?」
「そうです」
朔ははっきりと男達に告げる。
朔の登場に興醒めしたのか、二人組は面白くなさそうにフードコートの人混みへと姿を消した。
「大丈夫か?電話長くなって悪かった」
「……うん。大丈夫」
「遥……?」
平気、そう心の中では思っているのに。
指先は小さく震えて止まらない。
怖かった。
どうしよう、と頭が真っ白になって。
視線を上げて周りを見ても、誰もこっちを見ていなかった。
私は必死に笑顔を作る。
「ショッピングモールでもこういうことあるんだね、びっくりしちゃった。」
あはは、と平然を装った。
「……。」
朔は置いていた荷物を全部持って、私の手を握り、フードコートとは逆に歩き出す。
「ご飯、今すぐじゃなくてもいいか?」
「え、うん」
館内を下へと降りていく。
朔は前を見つめたまま、私を見ない。
「駅前の方に戻ってそっちで食事しよう」
「え、私はいいけど……朔お腹空いてない?」
「大丈夫だ。」
朔は振り向かない。でも、私の手を握ったまま離さない。
私の荷物まで全部持って、優しく引っ張ってくれる朔の手は熱い。
さっきまでの震えが消え、なにか別の熱に変わっていく。
朔は服を買いたいらしく、カジュアルでアクセントの効いたスタイルのショップに入る。
店内に並べられた服は男女問わず着こなせるユニセックスウェアが多い。
「……。」
「コート、悩んでるの?」
「あぁ、デザインがな。無地は使いやすい。でもチェックのコートは持ってない」
「どっちも朔なら似合いそうだけど……着回しするなら無地?」
「アクセント使いならチェックか。」
真剣に悩む朔。
その姿は雑誌の写真に出てきそうだった。
「朔って私服、オシャレだよね」
「そうか?」
「色使いとかも上手だし」
「父親がうるさいからな」
朔のお父さん、夏祭りの時に一緒に行きたいってごねてた記憶がある。
「朔の事が大好きなお父さん?」
朔の眉間に皺が刻まれていく。
不服そうな顔。
「……ファッション業界の仕事をしてるからか、そういうのにうるさい。勝手に服も買ってくるし、持ってくる」
納得だった。だから朔もこんなにオシャレなんだ。
それに比べて私は……普段の私はオシャレとは言えない。
「……。」
朔から離れてスマホを取り出し『オシャレ 始め方』と検索する。
雑誌、雑誌から読み始めたらいいのか……。
「遥?」
「朔、後で本屋行ってもいい?」
「?あぁ。」
頑張ったら、少しでも違和感なく隣に立てるだろうか?
この気持ちがなんなのか、私はまだ言葉にできない。
千雅のこともまだ答えが出せていない。
全てをはっきりさせることは、私にとって一番怖い変化だから。
——……
ショッピングモールのフードコート。昼時で席はすでに満席だった。
空いていたのはフードコートの端に配置されたカウンター席だけ。
端の椅子に朔と座る。
「人すごいね、カウンターだけど座れてよかった」
「そうだな」
「角だから人も少なくていいね」
〜♫
朔のポケットから着信音が聞こえる。
スマホを取り出し画面を見ると朔は椅子を立ち上がった。
「悪い、ちょっと電話してきていいか?」
「うん、ここで待ってるね」
朔はスマホを耳に当てて席から離れた。
何を食べようかな。スマホでフードコートの店舗を調べて昼食を吟味する。
「…………」
スマホの画面を見ると、もう二十分近く経っていた。
朔はまだ戻ってこない。
連絡してみるか悩み、朔が歩いて行った方向を見つめていると反対側から声をかけられる。
「こんにちは。一人?」
知らない男の人。
男性二人組は二十代か三十代に見える。少し危なそうな雰囲気に、スマホをぎゅっと掴む。
「いや、一人じゃないです……。」
「えー?でもさっきから見てたけど一人だったよね?」
朔のいない間に見られていたのか、私が嘘をついてると思っているみたいだった。
「さっき電話しに行って」
本当のことだった。
嘘なんてついてないのに。
話の通じなさそうな様子にこの場から逃げようと席を立つ。
「席、使いますか?それならどうぞ」
荷物を持って退こうとするが、男たちはさっきよりも近づいてきた。
「ほんとー?じゃあどこかで一緒にご飯でもしようよ。」
話を聞いていない。聞く気がないのか。
もっと強く言う?でも、刺激してしまいそうで怖い。
考えれば考える程、何も言えなくなってしまう。
私の肩を誰かが優しく抱いた。
「悪い、待たせた」
「……朔」
そっと私の背後に立ち、肩をそっと抱き寄せる。
「……彼氏?」
「そうです」
朔ははっきりと男達に告げる。
朔の登場に興醒めしたのか、二人組は面白くなさそうにフードコートの人混みへと姿を消した。
「大丈夫か?電話長くなって悪かった」
「……うん。大丈夫」
「遥……?」
平気、そう心の中では思っているのに。
指先は小さく震えて止まらない。
怖かった。
どうしよう、と頭が真っ白になって。
視線を上げて周りを見ても、誰もこっちを見ていなかった。
私は必死に笑顔を作る。
「ショッピングモールでもこういうことあるんだね、びっくりしちゃった。」
あはは、と平然を装った。
「……。」
朔は置いていた荷物を全部持って、私の手を握り、フードコートとは逆に歩き出す。
「ご飯、今すぐじゃなくてもいいか?」
「え、うん」
館内を下へと降りていく。
朔は前を見つめたまま、私を見ない。
「駅前の方に戻ってそっちで食事しよう」
「え、私はいいけど……朔お腹空いてない?」
「大丈夫だ。」
朔は振り向かない。でも、私の手を握ったまま離さない。
私の荷物まで全部持って、優しく引っ張ってくれる朔の手は熱い。
さっきまでの震えが消え、なにか別の熱に変わっていく。


