チュロスに焼きそば、綿飴にお好み焼き。
お化け屋敷は嫌だったから逃げたけど、宝探しは結構楽しかった。
私は片手にポップコーンを持って食べ歩く。
「私、めちゃくちゃ文化祭満喫してるかも」
「僕もすごく楽しいよ」
中庭の芝生では特設ステージが建てられ、文化祭役員が仕切りながら入れ替わりでイベントが行われていた。
ステージに向けて並べられた椅子の最後列に千雅と座り、足を休ませる。
「次は何しようか?あ、でもあと1時間くらいでビンゴ始まっちゃうね」
「そうだね。遥は他に……げっ」
げっ?
千雅から聞いたことのない言葉が聞こえ、千雅の視線の先を追う。その視線の先で男子生徒が大声を上げながら、こちらに迫ってきていた。
「ちいいいぃかあぁぁぁあ!!!」
何か怒ってるのかと思いきや、その勢いのまま正座。
走ってきた男子生徒は今にも泣きそうだった。
「千雅ぁ!お前午後は少しだけでもサッカー部の手伝いしてくれるって約束しただろぉー!」
「いや、それはそっちがどうしてもっていうから行けたら行くって話で……」
千雅は気まずそうに焦る。
「先輩達にもイケメンの売り子連れてくるんですぐ売れますよって啖呵切っちゃって大変なんだよぉ頼むよぉ!!」
男子生徒は涙目で千雅に縋り付く。
あまりにも必死に頼む姿に可哀想に思えてきた。
「千雅、私は大丈夫だから行ってあげたら?あと1時間だし、行けたら行くって言ったんでしょ?」
「っ女神……!」
名も知らない男子生徒に崇められた。
「でも……」
千雅は私の顔を見つめて悩んでいるようだった。申し訳ないと思う気持ちも少しあったのか、複雑な顔で席を立つ。
「遥、ごめんね。なるべく早く売り切って戻るから」
「わかった。頑張って」
笑顔で千雅を送り出す。
千雅が本気を出したら本当にすぐ売り切れてしまいそう。
助っ人に連れて行かれる姿を見送り、私は一人ステージを見る。
(あと1時間、どうしよう)
手に持っていたパンフレットを開き、やることを探す。
葵は部活の手伝いで由乃と拓真もクラスの当番。
千雅は今行ったし。
……。
朔、真由香ちゃんと文化祭楽しんでるかな。
朔のことを考えると変にモヤモヤする。
「隣、良いですか?」
「あっどうぞ」
声をかけられ、咄嗟に答えてしまう。
隣に座った少女は見覚えのある服に黒髪。
「えっ真由香ちゃん?!」
隣に目を少し腫らした真由香ちゃんが座っていた。
なんでここにいるの?!朔は?目が腫れて……。
謎がいっぱいだった。
「どうも。さっくんは貴女を探しに行きましたよ」
「えっなんで?!」
「……それは本人に聞いてください。それより千雅くんはどうしたんですか。」
私の疑問は解消されることなく、淡々と話が進んでいく。
「あ……千雅は約束があったみたいで、さっき解散したよ」
「そうですか。」
「……」
「……」
沈黙が、気まずい。
「……。」
目の事、聞いてもいいんだろうか……。
「真由香ちゃん……目、大丈夫?腫れてるけど……」
「大丈夫ではありません」
「で、ですよね……」
なんだろう。さっき廊下で話した時とは雰囲気が違う。
廊下でも敵意は感じたけれど、今はもっと違う棘があるような。
とりあえず目の腫れを……ふと、家庭科室に保冷剤があったことを思い出す。
「真由香ちゃん、ちょっとここで待ってくれる?」
「……?まぁ、良いですけど」
「すぐ戻るから!」
私は校舎に走る。廊下を進んで家庭科室に入り、冷凍庫から保冷剤を借りた。
それをハンカチで包み、真由香ちゃんの元へと急いで戻る。
真由香ちゃんはお願いした通り、椅子で待っていてくれた。
「これ、よかったら目に当てて?少しはよくなると思う」
そのままにしていたら明日まで酷くなりそうだった。
冷やしたら、少しは腫れも引くだろう。
「……。」
真由香ちゃんは保冷剤を見つめたまま、何も言わない。
「真由香ちゃん……?」
私の声に応えるようにそっと私の手から保冷剤を取り、目に当てる。
「……お節介」
「あはは……ごめんね」
「別に、謝る必要ない」
口調は強いのにキツく感じない。
反抗期の妹ができたみたいでなんだか可愛いかった。
「朔と喧嘩でもしたの?」
「……まぁ、そんなところ」
「朔も喧嘩とかするんだね、想像できないかも」
「……私もあんなこと言われるなんて、想像してなかったわよ」
なんで喧嘩したのか、詳しい事情はあんまり聞かない方がいいのかもしれない。
私にはわからないことかもしれないし。
「……帰る。」
「えっ、あと1時間でビンゴ大会とかも始まるよ?」
「いい、帰る。……さっくん、あっちの校舎で貴女のこと探してたから。じゃあね。」
そう言い残し、真由香ちゃんは本当に帰ってしまった。
「大丈夫かな……」
無理に強がっている姿が悲しそうで。私にしてあげられたのは保冷剤をあげることだけ。
朔は、大丈夫かな。
「……。」
真由香ちゃんが教えてくれた方向に歩き出す。
私は朔を探すことにした。
お化け屋敷は嫌だったから逃げたけど、宝探しは結構楽しかった。
私は片手にポップコーンを持って食べ歩く。
「私、めちゃくちゃ文化祭満喫してるかも」
「僕もすごく楽しいよ」
中庭の芝生では特設ステージが建てられ、文化祭役員が仕切りながら入れ替わりでイベントが行われていた。
ステージに向けて並べられた椅子の最後列に千雅と座り、足を休ませる。
「次は何しようか?あ、でもあと1時間くらいでビンゴ始まっちゃうね」
「そうだね。遥は他に……げっ」
げっ?
千雅から聞いたことのない言葉が聞こえ、千雅の視線の先を追う。その視線の先で男子生徒が大声を上げながら、こちらに迫ってきていた。
「ちいいいぃかあぁぁぁあ!!!」
何か怒ってるのかと思いきや、その勢いのまま正座。
走ってきた男子生徒は今にも泣きそうだった。
「千雅ぁ!お前午後は少しだけでもサッカー部の手伝いしてくれるって約束しただろぉー!」
「いや、それはそっちがどうしてもっていうから行けたら行くって話で……」
千雅は気まずそうに焦る。
「先輩達にもイケメンの売り子連れてくるんですぐ売れますよって啖呵切っちゃって大変なんだよぉ頼むよぉ!!」
男子生徒は涙目で千雅に縋り付く。
あまりにも必死に頼む姿に可哀想に思えてきた。
「千雅、私は大丈夫だから行ってあげたら?あと1時間だし、行けたら行くって言ったんでしょ?」
「っ女神……!」
名も知らない男子生徒に崇められた。
「でも……」
千雅は私の顔を見つめて悩んでいるようだった。申し訳ないと思う気持ちも少しあったのか、複雑な顔で席を立つ。
「遥、ごめんね。なるべく早く売り切って戻るから」
「わかった。頑張って」
笑顔で千雅を送り出す。
千雅が本気を出したら本当にすぐ売り切れてしまいそう。
助っ人に連れて行かれる姿を見送り、私は一人ステージを見る。
(あと1時間、どうしよう)
手に持っていたパンフレットを開き、やることを探す。
葵は部活の手伝いで由乃と拓真もクラスの当番。
千雅は今行ったし。
……。
朔、真由香ちゃんと文化祭楽しんでるかな。
朔のことを考えると変にモヤモヤする。
「隣、良いですか?」
「あっどうぞ」
声をかけられ、咄嗟に答えてしまう。
隣に座った少女は見覚えのある服に黒髪。
「えっ真由香ちゃん?!」
隣に目を少し腫らした真由香ちゃんが座っていた。
なんでここにいるの?!朔は?目が腫れて……。
謎がいっぱいだった。
「どうも。さっくんは貴女を探しに行きましたよ」
「えっなんで?!」
「……それは本人に聞いてください。それより千雅くんはどうしたんですか。」
私の疑問は解消されることなく、淡々と話が進んでいく。
「あ……千雅は約束があったみたいで、さっき解散したよ」
「そうですか。」
「……」
「……」
沈黙が、気まずい。
「……。」
目の事、聞いてもいいんだろうか……。
「真由香ちゃん……目、大丈夫?腫れてるけど……」
「大丈夫ではありません」
「で、ですよね……」
なんだろう。さっき廊下で話した時とは雰囲気が違う。
廊下でも敵意は感じたけれど、今はもっと違う棘があるような。
とりあえず目の腫れを……ふと、家庭科室に保冷剤があったことを思い出す。
「真由香ちゃん、ちょっとここで待ってくれる?」
「……?まぁ、良いですけど」
「すぐ戻るから!」
私は校舎に走る。廊下を進んで家庭科室に入り、冷凍庫から保冷剤を借りた。
それをハンカチで包み、真由香ちゃんの元へと急いで戻る。
真由香ちゃんはお願いした通り、椅子で待っていてくれた。
「これ、よかったら目に当てて?少しはよくなると思う」
そのままにしていたら明日まで酷くなりそうだった。
冷やしたら、少しは腫れも引くだろう。
「……。」
真由香ちゃんは保冷剤を見つめたまま、何も言わない。
「真由香ちゃん……?」
私の声に応えるようにそっと私の手から保冷剤を取り、目に当てる。
「……お節介」
「あはは……ごめんね」
「別に、謝る必要ない」
口調は強いのにキツく感じない。
反抗期の妹ができたみたいでなんだか可愛いかった。
「朔と喧嘩でもしたの?」
「……まぁ、そんなところ」
「朔も喧嘩とかするんだね、想像できないかも」
「……私もあんなこと言われるなんて、想像してなかったわよ」
なんで喧嘩したのか、詳しい事情はあんまり聞かない方がいいのかもしれない。
私にはわからないことかもしれないし。
「……帰る。」
「えっ、あと1時間でビンゴ大会とかも始まるよ?」
「いい、帰る。……さっくん、あっちの校舎で貴女のこと探してたから。じゃあね。」
そう言い残し、真由香ちゃんは本当に帰ってしまった。
「大丈夫かな……」
無理に強がっている姿が悲しそうで。私にしてあげられたのは保冷剤をあげることだけ。
朔は、大丈夫かな。
「……。」
真由香ちゃんが教えてくれた方向に歩き出す。
私は朔を探すことにした。


