朔と真由香は文化祭で盛り上がる廊下を進む。二人の間には、目には見えない壁を感じる。
周りの雰囲気とは違い、朔は少し機嫌が悪かった。
「……さっくんまだ怒ってる?」
「……少しな」
「真由香が強引にさっくん連れ出したから?」
「……。」
朔がここまで怒るのは真由香にとって予想外だった。今までどれだけ真由香がベタベタしても感情を表に出して怒ることはなかった。朔がこんなに機嫌を悪くする姿を見たのは初めてだ。
朔がいつもと違う。真由香は気づいていた。
「さっくん、遥さんのこと……好きなの?」
「……なんでそう思う」
「わかるよ。ずっとさっくんのことだけ見てきたんだから」
「……。」
「遥さんのこと好きだから……だから邪魔した真由香に怒ってるんでしょ……」
——小学1年生の時、はじめて会ったその瞬間。
さっくんに一目惚れした。
王子様かと思った。
静かなその空気も素敵でかっこよくて、何もかもが理想の王子様だった。
それからもずっとさっくんのことが好きだった。
さっくんがモテることも知っていた。
同じ中学の時も、たくさんの女の子がさっくんを好きだったから。
でも、さっくんは女の子に興味がなさそうだった。
絡むことがめんどくさいとでも言うように、女の子との関わりを好まないように見えた。
特別に構ってくれるのは私だけ。私だけが特別。
だから大丈夫だと思っていたのに、なのに——
真由香の心の中は、焦りと悲しみと嫉妬で溢れていた。
朔は何か考え込んでいるのか、黙ったまま。
多分さっくんはまだはっきりと答えを出してない。遥さんもきっとまだ。
——まだ、どうにかなるかもしれない——
真由香の中に黒い感情が小さく渦巻く。
きっと遥さんもさっくんのことが気になってる。でも千雅くんの存在がそれを邪魔してる。
千雅くんもそれをわかってるんだ。
「さっくんが遥さんのことを好きだとしても。私は諦めないから。」
「……」
「そんな簡単に諦められる好きなら、こんなにずっと好きじゃないんだよ。」
はっきりと、強い気持ちをぶつける。
真由香の中に諦める気持ちは一ミリもない。
さっくんの為にはならないのはわかってる。
この気持ちを押し付けて、さっくんの気持ちを蔑ろにするのは、私のエゴ。
でも、それでも。他の女の子に潔く譲ってやれるほど、私は綺麗じゃないんだ。
それが朔にとって、邪魔者だとしても。
「……真由香、俺は」
二人だけが喧騒から離れ、静寂に包まれた。
周りの雰囲気とは違い、朔は少し機嫌が悪かった。
「……さっくんまだ怒ってる?」
「……少しな」
「真由香が強引にさっくん連れ出したから?」
「……。」
朔がここまで怒るのは真由香にとって予想外だった。今までどれだけ真由香がベタベタしても感情を表に出して怒ることはなかった。朔がこんなに機嫌を悪くする姿を見たのは初めてだ。
朔がいつもと違う。真由香は気づいていた。
「さっくん、遥さんのこと……好きなの?」
「……なんでそう思う」
「わかるよ。ずっとさっくんのことだけ見てきたんだから」
「……。」
「遥さんのこと好きだから……だから邪魔した真由香に怒ってるんでしょ……」
——小学1年生の時、はじめて会ったその瞬間。
さっくんに一目惚れした。
王子様かと思った。
静かなその空気も素敵でかっこよくて、何もかもが理想の王子様だった。
それからもずっとさっくんのことが好きだった。
さっくんがモテることも知っていた。
同じ中学の時も、たくさんの女の子がさっくんを好きだったから。
でも、さっくんは女の子に興味がなさそうだった。
絡むことがめんどくさいとでも言うように、女の子との関わりを好まないように見えた。
特別に構ってくれるのは私だけ。私だけが特別。
だから大丈夫だと思っていたのに、なのに——
真由香の心の中は、焦りと悲しみと嫉妬で溢れていた。
朔は何か考え込んでいるのか、黙ったまま。
多分さっくんはまだはっきりと答えを出してない。遥さんもきっとまだ。
——まだ、どうにかなるかもしれない——
真由香の中に黒い感情が小さく渦巻く。
きっと遥さんもさっくんのことが気になってる。でも千雅くんの存在がそれを邪魔してる。
千雅くんもそれをわかってるんだ。
「さっくんが遥さんのことを好きだとしても。私は諦めないから。」
「……」
「そんな簡単に諦められる好きなら、こんなにずっと好きじゃないんだよ。」
はっきりと、強い気持ちをぶつける。
真由香の中に諦める気持ちは一ミリもない。
さっくんの為にはならないのはわかってる。
この気持ちを押し付けて、さっくんの気持ちを蔑ろにするのは、私のエゴ。
でも、それでも。他の女の子に潔く譲ってやれるほど、私は綺麗じゃないんだ。
それが朔にとって、邪魔者だとしても。
「……真由香、俺は」
二人だけが喧騒から離れ、静寂に包まれた。


