歓声と悔しさを残したまま、体育祭は幕を閉じた。
私たちのクラスは、準優勝だった。
それでも私は満足だったが、負けず嫌いな葵は「後少しだったのに!悔しい!」と嘆いていた。
月日が経つのは早く、期末テストも終わり、明日からは夏休みが始まる。
教室では由乃と拓真が夏休みの計画を練っていた。
「やっぱ夏祭りは外せないよなー」
「夏祭りといえば、音楽に合わせて打ち上がる、あそこの花火大会いってみたいんだよねぇ」
「行こう行こう」
スマホのスケジュールアプリを見ながらカップルで楽しそうに予定を立てている。
「私は夏休みバイト増やす予定」
「うちも〜金欠だし稼ごうかな〜」
「朔と千雅はどうするの?」
「僕はちょっと引越しの準備でバタついてるかな。近所から近所に引っ越すだけだから、そんなに大変ではないけどね」
「お母さんの事務所の近くに引っ越すんだっけ?」
「うん。今の場所も悪くはないんだけど、親が忙しいとなかなか帰って来られないから」
「近いならその方がお母さんも楽だもんね。朔はー?」
「夏休みは家にうるさいのが帰ってくるからな。適当に逃げながら過ごす」
うるさいのとは……。地味に気になる。
拓真と予定を立てていた由乃が、ワクワクとした様子でみんなに提案を持ちかける。
「あのね、もし予定が合えばだけどぉ、良かったらみんなで夏祭りに行かない?」
その提案に葵も拓真もノリノリだ。
「お、いいねー!」
「ありあり」
「僕もいいよ、遥も行くよね?」千雅は楽しそうだ。
「うん!事前にわかってれば、シフトも調整できるし」
「朔も行くよな?」拓真は朔にも確認を取る。
「あぁ、行くつもりだ。」
朔の視線が千雅を捉えるが、すぐに目を逸らす。
……喧嘩でもしてるのかな。
「あ、でも、うち今バイト先の先輩を夏祭りに誘ってて。まぁ去年も断られたから、今年も断られると思うけどね〜」
「バイト先ってあの片想いの先輩?」
「あおちゃんがずっと好きな人だよねぇ〜」
葵は珍しく照れるように顔を赤らめる。
「あはは!そう。まぁでも毎回頑張って誘っても断られちゃうんだけどね!だからって諦められるような安い好きは持ってないんだい!」
「よっ!あおちゃん!一途な女の子ぉ〜!」
「その勢いで先輩とも話せればいいのにね」
「遥うるさいっ」
葵の恋バナに盛り上がる私達の横では、無言の朔と千雅に挟まれ、気まずそうな拓真が少し肩をすくめながら、佇んでいたのだった。
――――――――――――
予定を決めた私たちは、教室を後にする。
一ヶ月の長期休みに心が躍った。
千雅の言葉はいまだに私の胸に残ったまま、好きな人が誰なのかもわからない。
「考えてみて?」と言われたけれど、私が知ってる人で思いつくのは由乃と葵しかいなかった。けど、由乃には拓真がいるし、葵ともそんな感じには見えない。
ということは昔の知り合い……?うーん、分からない。
今は考えても仕方ない。そのうち千雅から話があるかもしれないし、今は夏休みを楽しむ事に専念しよう。
「じゃあまた夏祭りでね」
「夏風邪ひくなよー葵は大丈夫だろうけど」
「拓真、それ遠回しに馬鹿って言ってるだろ」
校門を出て由乃達と別れる。
私と朔、千雅は同じ方面なので途中まで三人で帰る事にした。
私を真ん中にして舗装された道を駅に向かって歩く。
「夏祭り、楽しみだね〜浴衣着ちゃおうかな〜」
「遥の浴衣、僕は見たいな」
「……。」
会話に足並みが揃わないような違和感を感じる。
朔と千雅の間に見えない壁があるような、息苦しい。
拓真、さっきこんな気持ちだったのか。
いつまでもこんな空気じゃ、遊びに行っても楽しめない。
覚悟を決めて、二人の喧嘩原因を聞いてみる事にする。
「……二人ともさっきからずっと雰囲気悪いけど、何か喧嘩でもしたの?」
図星なのか、二人の視線が自然と、少し外へ向く。
「何があったか知らないけど、ずっとそんな感じだと周りも気を使うし、ダメだよ。」
「……悪かった。」
「ごめん、遥……」
怒られて少し我に返ったようだ。
「喧嘩するのは仕方ないけどね」
自分の背丈よりも高い二人の肩に、そっと手を乗せ、軽く叩く。
「夏祭り、何食べようね?」
手に二人の温もりが残ったまま、帰り道の空気は静かに流れていった。
――――――――――――
約束の夏祭りまで後、数日。
私の部屋には服や収納ケースが散乱し、何かを探した痕跡が残っていた。
クローゼットの中は出せるだけ出されて空になっている。
困った。非常に困った。
「んぁー!浴衣見つかんない!」
浴衣をどこにやったか忘れてしまい、探し始めたがどれだけ探しても浴衣が見つからない。
「どうしよう、もういっそ私服で行く?でも由乃達と浴衣着ようって約束したもんなぁ」
悩みに悩んだ末、面倒になり思い切った結論に至る。
「もーいいや、買いに行こ。」
それが最善だった。
最善と言っても、夏祭りまではもう一週間もない。
夏祭りまでは今日以外は全部バイトを入れてしまったので、今日買いに行くしかない。
でも自分の浴衣の為だけに一人で出掛けるのも、なかなかに億劫だ。
「あーめんどくさいぃ……」
私は涼しい部屋に後ろ髪を引かれながらも、灼熱の外へと足を踏み出した。目指すはショッピングモール。
ただ浴衣を買うだけ、それだけのはずだった。
私たちのクラスは、準優勝だった。
それでも私は満足だったが、負けず嫌いな葵は「後少しだったのに!悔しい!」と嘆いていた。
月日が経つのは早く、期末テストも終わり、明日からは夏休みが始まる。
教室では由乃と拓真が夏休みの計画を練っていた。
「やっぱ夏祭りは外せないよなー」
「夏祭りといえば、音楽に合わせて打ち上がる、あそこの花火大会いってみたいんだよねぇ」
「行こう行こう」
スマホのスケジュールアプリを見ながらカップルで楽しそうに予定を立てている。
「私は夏休みバイト増やす予定」
「うちも〜金欠だし稼ごうかな〜」
「朔と千雅はどうするの?」
「僕はちょっと引越しの準備でバタついてるかな。近所から近所に引っ越すだけだから、そんなに大変ではないけどね」
「お母さんの事務所の近くに引っ越すんだっけ?」
「うん。今の場所も悪くはないんだけど、親が忙しいとなかなか帰って来られないから」
「近いならその方がお母さんも楽だもんね。朔はー?」
「夏休みは家にうるさいのが帰ってくるからな。適当に逃げながら過ごす」
うるさいのとは……。地味に気になる。
拓真と予定を立てていた由乃が、ワクワクとした様子でみんなに提案を持ちかける。
「あのね、もし予定が合えばだけどぉ、良かったらみんなで夏祭りに行かない?」
その提案に葵も拓真もノリノリだ。
「お、いいねー!」
「ありあり」
「僕もいいよ、遥も行くよね?」千雅は楽しそうだ。
「うん!事前にわかってれば、シフトも調整できるし」
「朔も行くよな?」拓真は朔にも確認を取る。
「あぁ、行くつもりだ。」
朔の視線が千雅を捉えるが、すぐに目を逸らす。
……喧嘩でもしてるのかな。
「あ、でも、うち今バイト先の先輩を夏祭りに誘ってて。まぁ去年も断られたから、今年も断られると思うけどね〜」
「バイト先ってあの片想いの先輩?」
「あおちゃんがずっと好きな人だよねぇ〜」
葵は珍しく照れるように顔を赤らめる。
「あはは!そう。まぁでも毎回頑張って誘っても断られちゃうんだけどね!だからって諦められるような安い好きは持ってないんだい!」
「よっ!あおちゃん!一途な女の子ぉ〜!」
「その勢いで先輩とも話せればいいのにね」
「遥うるさいっ」
葵の恋バナに盛り上がる私達の横では、無言の朔と千雅に挟まれ、気まずそうな拓真が少し肩をすくめながら、佇んでいたのだった。
――――――――――――
予定を決めた私たちは、教室を後にする。
一ヶ月の長期休みに心が躍った。
千雅の言葉はいまだに私の胸に残ったまま、好きな人が誰なのかもわからない。
「考えてみて?」と言われたけれど、私が知ってる人で思いつくのは由乃と葵しかいなかった。けど、由乃には拓真がいるし、葵ともそんな感じには見えない。
ということは昔の知り合い……?うーん、分からない。
今は考えても仕方ない。そのうち千雅から話があるかもしれないし、今は夏休みを楽しむ事に専念しよう。
「じゃあまた夏祭りでね」
「夏風邪ひくなよー葵は大丈夫だろうけど」
「拓真、それ遠回しに馬鹿って言ってるだろ」
校門を出て由乃達と別れる。
私と朔、千雅は同じ方面なので途中まで三人で帰る事にした。
私を真ん中にして舗装された道を駅に向かって歩く。
「夏祭り、楽しみだね〜浴衣着ちゃおうかな〜」
「遥の浴衣、僕は見たいな」
「……。」
会話に足並みが揃わないような違和感を感じる。
朔と千雅の間に見えない壁があるような、息苦しい。
拓真、さっきこんな気持ちだったのか。
いつまでもこんな空気じゃ、遊びに行っても楽しめない。
覚悟を決めて、二人の喧嘩原因を聞いてみる事にする。
「……二人ともさっきからずっと雰囲気悪いけど、何か喧嘩でもしたの?」
図星なのか、二人の視線が自然と、少し外へ向く。
「何があったか知らないけど、ずっとそんな感じだと周りも気を使うし、ダメだよ。」
「……悪かった。」
「ごめん、遥……」
怒られて少し我に返ったようだ。
「喧嘩するのは仕方ないけどね」
自分の背丈よりも高い二人の肩に、そっと手を乗せ、軽く叩く。
「夏祭り、何食べようね?」
手に二人の温もりが残ったまま、帰り道の空気は静かに流れていった。
――――――――――――
約束の夏祭りまで後、数日。
私の部屋には服や収納ケースが散乱し、何かを探した痕跡が残っていた。
クローゼットの中は出せるだけ出されて空になっている。
困った。非常に困った。
「んぁー!浴衣見つかんない!」
浴衣をどこにやったか忘れてしまい、探し始めたがどれだけ探しても浴衣が見つからない。
「どうしよう、もういっそ私服で行く?でも由乃達と浴衣着ようって約束したもんなぁ」
悩みに悩んだ末、面倒になり思い切った結論に至る。
「もーいいや、買いに行こ。」
それが最善だった。
最善と言っても、夏祭りまではもう一週間もない。
夏祭りまでは今日以外は全部バイトを入れてしまったので、今日買いに行くしかない。
でも自分の浴衣の為だけに一人で出掛けるのも、なかなかに億劫だ。
「あーめんどくさいぃ……」
私は涼しい部屋に後ろ髪を引かれながらも、灼熱の外へと足を踏み出した。目指すはショッピングモール。
ただ浴衣を買うだけ、それだけのはずだった。


