-数日前ー……。
中庭での昼食後。朔と千雅の間には絶妙な空気が流れたまま、お昼ご飯はお開きとなった。
放課後、千雅は委員会の仕事で居残りをしている遥を待つために、校内を散策していた。
校内には部活をする生徒や、友人達と楽しそうに会話する生徒がまばらに残っている。
渡り廊下を過ぎようとした時、反対側からやってきた女子生徒たちが千雅に気付き声をかける。
「あ!千雅くんじゃん!」
「千雅くん!帰るなら一緒に帰ろー!」
「ごめん、まだ用があるから」
千雅は女子生徒たちに微笑みながら優しく断りを入れる。
腕時計を見ると、針は午後4時30分を過ぎていた。そろそろかな、と千雅は遥のいる教室へと戻る。
教室の扉を開けて様子を伺うと、朔が一人で仕事をしているだけだった。
「あれ……」
千雅は無愛想な声で、朔に「遥は?」と聞いた。
「バイト。思い出して焦って帰ったぞ。住田にも連絡すると言っていたが、来てないのか?」
朔は手元に視線を落としたまま、千雅を見る事なく要点だけを伝えた。
千雅はスマホを確認した。
[千雅ごめん!バイト忘れてて!千雅どこに居るか分かんなかったからそのままバイトいくね!今度埋め合わせするから!本当ごめんー!]と、確かに遥から数分前に連絡が来ていた。校内ではマナーモードにしていたので気づかなかった。
「確かに連絡きてた。ありがとう、佐伯くん」
教えてくれた朔に、貼り付けたような笑顔で礼を伝える。
「あぁ。」
朔は一度もこちらを見る様子はない。
「……。」
「……。」
二人の間に、これ以上会話は続かなかった。
千雅は、朔に踏み込んだ話をする事にした。
「佐伯くん、一つ聞いても?」
「……なんだ。」
「佐伯くんは遥のことが好きなの?」
朔の手元のシャープペンが動きを止める。体は硬直し、朔の心は衝撃を受ける。
俺が遥を?
朔の中で千雅から投げられた言葉は、処理できない言葉だった。その言葉が頭の中を駆け巡る。
遥は大切な友人だ。それ以上でも、それ以下でもない。
一緒にいて楽しくて、気持ちを素直に出せて、もっと一緒に過ごしたいと思う。ただそれだけだ。
それは住田の言う【好き】とは違う……ちがう。
そう考えて、朔は千雅へと答えを返す。
「遥はそういうのじゃない。ただ……大切な友人だ。」
そう伝える朔の表情は、少し辛そうにも見える。千雅はその様子を見逃さない。
でも本人が違うというのだから、気付かせてやるつもりもない。
「そうなんだ。ごめん。お昼の時、とても遥と仲が良さそうに見えたからてっきり僕は君が遥のことを好きなんだと勘違いして。酷い態度を取った、ごめんよ?」
笑顔を崩す事なく、千雅はそのまま話し続ける。
「……僕、遥のことが好きなんだ。小学生の頃からずっと。遥の話はなんでも聞いてきた。家の都合でお互い離れ離れになってしまったけど……こうやってまた再会できるなんて、何かの導きとしか思えないだろ?」
千雅は続ける。
「だから、遥に僕を好きになってもらいたいんだ。」
そう話す千雅は、友人へ相談する姿に見える。でも、全てが本当の意味では笑っていなかった。
「……そうか。」
千雅からは朔の表情は見えない。けど確実に声と姿は、動揺を隠せない。
それでも千雅は牽制をやめない。
「じゃあ遥もいないし、帰ることにするよ。良かったらこれからは気軽に千雅って呼んでくれると嬉しい。僕の勘違いで気分を悪くさせてしまったし、遥は君と仲良くしてほしいみたいだから。」
「……あぁ。」
千雅は教室を出ようと足を進めたが、出る一歩手前で足を止める。
「……もし、万が一。今後君が遥を好きになったとしても。僕、譲る気はないから」
今までで1番真剣な声だった。その言葉は朔に深く突き刺さる。
「じゃあ、朔。また明日ね。」
言いたいことは言い切ったのか、千雅はそのまま教室を出て行った。
朔は自分の中にあるこの感情が何なのか、分からなかった。
中庭での昼食後。朔と千雅の間には絶妙な空気が流れたまま、お昼ご飯はお開きとなった。
放課後、千雅は委員会の仕事で居残りをしている遥を待つために、校内を散策していた。
校内には部活をする生徒や、友人達と楽しそうに会話する生徒がまばらに残っている。
渡り廊下を過ぎようとした時、反対側からやってきた女子生徒たちが千雅に気付き声をかける。
「あ!千雅くんじゃん!」
「千雅くん!帰るなら一緒に帰ろー!」
「ごめん、まだ用があるから」
千雅は女子生徒たちに微笑みながら優しく断りを入れる。
腕時計を見ると、針は午後4時30分を過ぎていた。そろそろかな、と千雅は遥のいる教室へと戻る。
教室の扉を開けて様子を伺うと、朔が一人で仕事をしているだけだった。
「あれ……」
千雅は無愛想な声で、朔に「遥は?」と聞いた。
「バイト。思い出して焦って帰ったぞ。住田にも連絡すると言っていたが、来てないのか?」
朔は手元に視線を落としたまま、千雅を見る事なく要点だけを伝えた。
千雅はスマホを確認した。
[千雅ごめん!バイト忘れてて!千雅どこに居るか分かんなかったからそのままバイトいくね!今度埋め合わせするから!本当ごめんー!]と、確かに遥から数分前に連絡が来ていた。校内ではマナーモードにしていたので気づかなかった。
「確かに連絡きてた。ありがとう、佐伯くん」
教えてくれた朔に、貼り付けたような笑顔で礼を伝える。
「あぁ。」
朔は一度もこちらを見る様子はない。
「……。」
「……。」
二人の間に、これ以上会話は続かなかった。
千雅は、朔に踏み込んだ話をする事にした。
「佐伯くん、一つ聞いても?」
「……なんだ。」
「佐伯くんは遥のことが好きなの?」
朔の手元のシャープペンが動きを止める。体は硬直し、朔の心は衝撃を受ける。
俺が遥を?
朔の中で千雅から投げられた言葉は、処理できない言葉だった。その言葉が頭の中を駆け巡る。
遥は大切な友人だ。それ以上でも、それ以下でもない。
一緒にいて楽しくて、気持ちを素直に出せて、もっと一緒に過ごしたいと思う。ただそれだけだ。
それは住田の言う【好き】とは違う……ちがう。
そう考えて、朔は千雅へと答えを返す。
「遥はそういうのじゃない。ただ……大切な友人だ。」
そう伝える朔の表情は、少し辛そうにも見える。千雅はその様子を見逃さない。
でも本人が違うというのだから、気付かせてやるつもりもない。
「そうなんだ。ごめん。お昼の時、とても遥と仲が良さそうに見えたからてっきり僕は君が遥のことを好きなんだと勘違いして。酷い態度を取った、ごめんよ?」
笑顔を崩す事なく、千雅はそのまま話し続ける。
「……僕、遥のことが好きなんだ。小学生の頃からずっと。遥の話はなんでも聞いてきた。家の都合でお互い離れ離れになってしまったけど……こうやってまた再会できるなんて、何かの導きとしか思えないだろ?」
千雅は続ける。
「だから、遥に僕を好きになってもらいたいんだ。」
そう話す千雅は、友人へ相談する姿に見える。でも、全てが本当の意味では笑っていなかった。
「……そうか。」
千雅からは朔の表情は見えない。けど確実に声と姿は、動揺を隠せない。
それでも千雅は牽制をやめない。
「じゃあ遥もいないし、帰ることにするよ。良かったらこれからは気軽に千雅って呼んでくれると嬉しい。僕の勘違いで気分を悪くさせてしまったし、遥は君と仲良くしてほしいみたいだから。」
「……あぁ。」
千雅は教室を出ようと足を進めたが、出る一歩手前で足を止める。
「……もし、万が一。今後君が遥を好きになったとしても。僕、譲る気はないから」
今までで1番真剣な声だった。その言葉は朔に深く突き刺さる。
「じゃあ、朔。また明日ね。」
言いたいことは言い切ったのか、千雅はそのまま教室を出て行った。
朔は自分の中にあるこの感情が何なのか、分からなかった。


