この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 帆奈美は慌てて資料を開き、画面をスクロールする。

 《今どこだ》
 「コンセプトのスライドです」
 《その一枚前に戻って》
 「……はい」

 言われた通りに戻す。

 《そこ》
 「ターゲット設定、ですけど」
 《そこだな、ズレてるの》
 「……え?」

 あまりにもあっさり言われて、思考が止まる。
 「でも、ここは事前のヒアリングをもとに――」
 《違う》

 被せるように遮られた。

 《そこじゃない。《ヒアリングで言う建前と、実際に金を出す動機はべつだ》

 低く、迷いのない声だ。淡々と告げられ、言葉に詰まった。

 《この商品、スペックだけ見れば競合に劣る。だから合理性で戦うと負ける。データを見ただろう?》
 「……購買データ、ですか」
 《そうだ。リピート率が異常に高い。つまり、最初の動機は合理性じゃない。なんとなくいいとか、気分が上がるとか、そういう感覚だ》
 「あ……」