この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 (って、そんなの今はどっちでもいいでしょ。とにかく緊急事態。絶体絶命のピンチだよ……!)

 仕事の次は東城宏臣。今日はとことん帆奈美を追い詰める日のようだ。
 背筋を冷や汗が伝っていく。

 「東城……さん、どうしてここに……」

 なんとか声を絞りだした。

 「仕事帰りですか」

 質問に答えず、宏臣は淡々と尋ねる。完全に会話の主導権を握られていた。
 帆奈美は喉をごくりと鳴らす。

 「え……あ、はい」
 「ちょうどよかった」

 宏臣は短く言ってから、ほんのわずかに口元を緩めた。

 「あなたを探していたんです。帆奈美さん」

 その瞬間、頭の中でなにかが弾けた。
 名前まで知られている。もはや誤魔化しようがない。

 「その……これは……」

 じりじりと後ずさりしていくが、それに合わせて宏臣も前進するから、一向に距離は離れない。気づけば、ビルの外壁に背中があたっていた。