もちろん、あれは縁談の席だった。しかも自分は代役で、本来ならば関わるべき相手ではない。
それでも、食事をしながら交わした会話や、穏やかに微笑んでこちらの話を聞いていた彼の表情を思い出すと、胸の奥が少しだけきゅっと締まる。
(まぁ、でも……)
帆奈美は首を軽く振った。
これでよかったのだ。代役のまま会い続けていたら、いつか必ず問題になる。それに、相手は大企業の御曹司だ。自分のような一般家庭の人間が関わり続けるような人ではない。ほんの少し会話をしただけの、短い縁。それだけのことだ。
帆奈美が働くネクサスブランディングの午後のオフィスは、午前中とは違う種類の慌ただしさに包まれていた。
「立原さん、このあとクライアントとの打ち合わせ、先方の担当者が急遽変更になったみたいで……資料、このままで大丈夫ですか?」
近くのデスクから声が飛ぶ。
「担当変わったの? どの人?」
「えっと、この人です」
差し出されたタブレットを受け取り、帆奈美は素早く目を走らせた。
「ああ、この人なら数字よりストーリー重視だね。今のままだとちょっと固いかも。ここ、もう少しイメージ湧くように変えようか」
それでも、食事をしながら交わした会話や、穏やかに微笑んでこちらの話を聞いていた彼の表情を思い出すと、胸の奥が少しだけきゅっと締まる。
(まぁ、でも……)
帆奈美は首を軽く振った。
これでよかったのだ。代役のまま会い続けていたら、いつか必ず問題になる。それに、相手は大企業の御曹司だ。自分のような一般家庭の人間が関わり続けるような人ではない。ほんの少し会話をしただけの、短い縁。それだけのことだ。
帆奈美が働くネクサスブランディングの午後のオフィスは、午前中とは違う種類の慌ただしさに包まれていた。
「立原さん、このあとクライアントとの打ち合わせ、先方の担当者が急遽変更になったみたいで……資料、このままで大丈夫ですか?」
近くのデスクから声が飛ぶ。
「担当変わったの? どの人?」
「えっと、この人です」
差し出されたタブレットを受け取り、帆奈美は素早く目を走らせた。
「ああ、この人なら数字よりストーリー重視だね。今のままだとちょっと固いかも。ここ、もう少しイメージ湧くように変えようか」



