この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「だって、お父さんに断るよりずっと安全だと思ってたんだもん」

 愛理は唇を尖らせたあと、ふっと力を抜いたように息を吐いた。

 「でも帆奈美ちゃんの話を聞いていると、東城さんって……なんか、そういうの誤魔化せそうな人じゃないよね」
 「うん。むしろ一番バレたらまずいタイプ」

 昨日の食事を思い出す。
 穏やかな物言いの裏で、相手をよく観察している目をしていた。ああいう人は、小さな違和感でも見逃さない。チケットの話で、愛理の父親を持ち出そうとしたときだって危なかった。あともうひと言、帆奈美が口走っていたらアウトだっただろう。
 愛理も同じことを感じていたのか、こくりと頷いた。

 「それに、三木屋フーズのこともあるんだよね」
 「そう。そこが一番怖い」

 帆奈美は腕を組んだ。

 「傘下から外れるような話になる可能性だってある。そのあとはあらゆる方面に手を回されて、三木屋フーズの存続が厳しくなるかもしれない」
 「ひぃ……」

 愛理は本気で顔をしかめた。

 「それは嫌。すごく嫌」
 「でしょ?」