この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 推しの話をしていたときに、自分の正体に通じるような発言をしてしまったときには焦った。

 『すごいですね。入手は難しかったんじゃないですか?』
 『それが、友人のお父様が三木屋フーズの――』

 そのときの状況を思い返して、今度こそ身震いした。
 宏臣は気づいていないようだったからよかったものの。

 「そうだよね……」

 愛理は手にしていたクッキーを皿の上に戻し、しばらく黙り込んだ。さっきまでの軽い調子は影を潜め、視線がテーブルの上を彷徨う。
 帆奈美はその様子をじっと見守った。ようやく自分の置かれている状況を現実として受け止めはじめたらしい。

 「……帆奈美ちゃん」
 「なに?」
 「もし代役がバレたら、東城さんって怒ると思う?」
 「怒るでしょ。普通に考えて」

 即答すると、愛理は肩をびくりとさせた。怒らないほうがおかしい。

 「だよね……」

 小さく呟き、紅茶のカップを持ち上げかけて、またそっと戻す。

 「帆奈美ちゃんにお願いしたの、軽く考えてたかも」
 「今さら?」