この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました


 宏臣と食事をした翌日の土曜日、帆奈美は愛理の自宅を訪れた。
 門構えからして、一般家庭とは別世界。黒塗りの車が何台も余裕で停められる広い車寄せ、手入れの行き届いた芝生、そして中央に据えられた噴水が、この家の主がどれほどの企業を率いているかを雄弁に物語っている。邸宅は洋館風だが、どこか日本的な慎ましさも残していた。

 愛理の部屋は二階の角にある。淡いクリーム色の壁に、朝の光をやわらかく散らすレースのカーテン。社長令嬢らしく上質なものが揃っているのに、幼い頃から大切にしているテディベアがベッドに座り、背伸びしすぎない可愛らしさを漂わせている。

 ソファに向かい合って座り、家政婦が紅茶とクッキーを恭しく置いて去ると、帆奈美は早速本題を切りだした。

 「愛理、もう無理。お見合いの代役を降りたい」
 「そんなぁ。しっかり振られてくれるって約束してくれたのに」
 「そうなんだけど、いくら私が結婚に不向きなのかを披露しても、全然引く素振りもないんだよ?」

 将来は大企業を背負う夫を支えるどころか、推し活に専念すると宣言しているのに、まったく意に介さない。それどころか、グッズの専用部屋まで用意するときた。常人ならありえない反応だ。
 別れ際には『また会いましょう。連絡します』と言われてしまった。

 「もしかして帆奈美ちゃん、東城さんに気に入られちゃった?」