食事を終え、宏臣はエントランスに横づけされた車の後部座席にひとりで乗り込んだ。愛理には迎えの車が来ていなかったため、送っていくと申し出たが、食べ過ぎたため少し歩きたいと断られてしまった。
(まぁ、あれだけ食べれば無理もないだろうな)
さすがに多いだろうと思って見ていたが、彼女はぺろりと平らげた。見事な食べっぷりを思い出して、つい笑みが零れる。
車が赤信号で止まると、歩道を愛理が歩いていくのが見えた。なぜか小さい男の子の手を引いている。
(なんだあれは……?)
その子に話しかけながら周りをきょろきょろ見渡す様子を見て、迷子だろうと結論づける。男の子がなにかを指さすと、愛理はしゃがみ込んで目線を合わせ、ゆっくりと言葉を返しているようだった。
そのまま少し歩いたところで、彼女が立ち止まる。周囲を見回しながら、男の子になにか尋ねているらしい。
宏臣は小さく息をついた。
本当に、この女性は――
そこまで考えたところで信号が青に変わった。
動きだした車窓の向こうで、ちょうど愛理の前にひとりの女性が駆け寄ってくるのが見えた。息を切らしながら男の子を抱きしめている。どうやら母親らしい。



