この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 だとしても、その率直さは嫌いではない。――いや、むしろかなり好意的に捉えていた。これまで出会った、どの女性にもない魅力だ。

 「この前、初めて最前列の席で観られたんです!」

 愛理が、ひときわ嬉しそうに微笑む。

 「すごいですね。入手は難しかったんじゃないですか?」
 「それが、友人のお父様が三木屋フーズの――」

 そこまで言って、愛理はハッとしたように口元を手で押さえた。
 焦っているのが手に取るようにわかる。

 「どうかしましたか? 愛理さんのお父様の会社関係で、なにか伝手があったんでしょうか」
 「あ……ええ、そうなんです」

 目をあちこちへ泳がせる。どことなく慌てた様子だ。

 「と、とにかく、鳳麗歌劇団は私の人生の中で一番大切なものだということをわかっていただければ……」
 「そうですね、愛理さんが推しを最優先していることは十分伝わってきました」

 結婚しても家庭を優先する女性ではないと言いたいのだろう。

 「僕はべつに構いませんが」
 「……え?」
 「趣味に熱中できる人は嫌いではありません」