電気事業や建設業、菓子メーカーから食品メーカーなど多種多様な業種を展開している巨大な企業『東城コンツェルン』本社ビルの最上階。壁一面の窓から午後の光が差し込む役員大会議室で、宏臣は書類に目を落とした。
「こちら、三カ年経営計画の素案です。副社長のご意見を窺ってから、社長に提出する予定です」
秘書の日高琢磨が差し出したファイルを受け取り、ページめくる。
そこには海外エネルギー事業への投資拡大や保険部門のデジタル化、建設事業の再編など、三年後の売上目標と投資配分がグラフと数値で整理されている。
部屋にはグループ企業の役員たちがずらりと顔を連ね、宏臣がどう決済するか固唾を呑んで見守っていた。空気はぴんと張り詰め、長机の上に並ぶ資料の紙音すら許さないほどだ。
数ページ目で指を止める。
「この投資比率だと、来年のキャッシュフローが厳しくなりますね」
穏やかな声で指摘すると、役員たちの肩がぴくりと揺れた。
「え、ええと……」
「市場の伸びは悪くないですが、為替の影響がまだ読めない。半年様子を見てからでも遅くないでしょう」
言葉を選んだつもりだが、結論は明確だ。



