この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 営業企画部に所属する帆奈美には、企画資料やクライアント対応、社内調整などやることは山ほどある。今のように同僚から助けを求められるのもしょっちゅうだ。

 帆奈美は幼い頃から頼られる側だった。妹は甘え上手で要領がよく、両親もどちらかというと妹に手をかけてきた。帆奈美は家族の中で中心的な存在ではなく、『帆奈美なら大丈夫』『お姉ちゃんなんだから』という立場。そんな役回りが、いつの間にか当たり前になっていた。
 気がつけば今も、こうして誰かに頼られる側にいる。それでも、嫌な気はしない。そういう性分なのだ、きっと。

 周りをフォローしながら仕事を続けているうちにお昼の時間になり、後輩が声をかけてきた。

 「立原さん、お昼行きます?」
 「うーん、今日は外で買ってくる」

 軽く手を振ってオフィスをあとにする。名だたる企業が名前を連ねる高層ビルをエレベーターで下り、外へ出た。

 ちょうど昼休みの時間帯。ビルの前の通りには、同じように昼食を求めて外へ出てきたオフィスワーカーたちが行き交っている。
 通り沿いには手軽に入れるレストランやカフェが並び、歩道の一角には弁当やサンドイッチを売る移動販売のワゴンも出ていた。香ばしい匂いに誘われるように、スーツ姿の人たちが次々と列を作っている。

 (さて、今日はなににしようかな)