この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 言いきると、ラウンジの空気が一瞬だけ静まった気がした。
 宏臣はじっと帆奈美を見つめている。
 引いた、だろうか。

 (いい感じ……?)

 しかし次の瞬間、予想を覆す言葉が返される。

 「結婚後の具体的な生活を、そこまで想像されているんですね」
 「……え?」
 「結婚願望は薄いとおっしゃいながら」

 穏やかな笑みのまま、核心を突いてきた。
 心臓がどくんと跳ねる。
 彼はわずかに身を乗り出した。

 「それに、好きなものを我慢しない。肩書きには興味がない。自分の時間は大切にするというのは」

 静かに淡々と整理しつつ、とんでもない言葉を続けた。

 「僕からすると、むしろ好ましい条件ばかりですが」

 にこりと微笑むが、目はまったく笑っていなかった。

 「……好ましい?」

 首を傾げながら聞き返す。どこをどうしたらそういう反応になるのだろう。
 宏臣はあっさり頷いた。