この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました


 やわらかな光が満ちるチャペルに、静かな緊張と祝福の空気が漂っていた。
 高い天井から差し込む陽光が、純白のバージンロードを淡く照らしている。ゆるやかに流れるオルガンの音色に導かれるように、帆奈美は一歩ずつ歩みを進めた。
 胸の奥で、鼓動がたしかに高鳴っている。

 (ここまで来たんだ……)

 さまざまな出来事が脳裏をよぎる。身代わりで臨んだお見合い。正体がバレた日のこと。彼の母親の強固な想い。迷いながらも進んだすべての先に、今がある。
 視線を上げると、祭壇の前に立つ宏臣の姿があった。真っすぐにこちらを見つめるその眼差しはいつもと同じようでいて、どこか特別な熱を帯びている。
 その視線に迎えられるように、帆奈美は彼のもとへと辿り着いた。
 牧師の穏やかな声が響く。
 誓いの言葉が読み上げられ、静寂がふたりを包み込む。

 「あなたは――」

 問いかけに、帆奈美は迷うことなく頷いた。

 「はい、誓います」

 はっきりとした声が、チャペルに響く。
 続いて宏臣へと向けられる問い。
 ほんの一瞬の間のあと、低くたしかな声が答えた。

 「誓います」