この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 (こんな顔、初めて見るかも……)

 同じものを好きだというだけで、こんなにも距離が近くなるなんて。ものすごく不思議で、とてもうれしかった。


 見ごたえのある公演が終わり、熱気に包まれた会場をあとにした帆奈美は、凪子の厚意で一緒にタクシーに乗り込んだ。
 気分は高揚したまま。感想を伝え合いたくてたまらない。
 タクシーが走り出すや否や、凪子が口を開いた。

 「二幕の冒頭シーン、あなたはどう思った?」

 帆奈美も同じことを言いたかったため、思わず顔を見合わせる。

 「やっぱりそこですよね!」
 「ええ、あそこは外せないわ」

 公演前の距離感が嘘のように小さく笑い合う。

 「瑞月ひかるのあの視線、すごくなかったですか? 一瞬で空気を変えて」
 「ええ、あの〝間〟の取り方が絶妙なのよ。わざと一拍置いてから動くでしょう? あれで観客の意識を一気に引き寄せているの」
 「わかります! 息を呑む感じで……私、あそこで鳥肌立ちました」
 「私も同じよ」

 凪子が満足げに頷く。