この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 立ち止まった凪子にそっと声をかける。

 「あの……お義母様もお好きなんですか?」

 ぴたっと動きが止まり、ゆっくりと振り返る。サングラスの奥から、じっと見据えられた。

 「……どういう意味かしら」

 明らかにとぼけている。けれど、手元にしっかり握られたグッズがすべてを物語っていた。
 騒がしい人混みの中で、ふたりの間にだけ沈黙が落ちる。数秒の攻防のあと、凪子は小さく息を吐いた。

 「……ええ、まあ、嫌いではないわ」

 観念したように、視線を逸らす。

 (絶対大好きだ!)

 思わず心の中で突っ込んだ直後、凪子がぐっと距離を詰めてきた。

 「いいこと? このことは誰にも言わないでちょうだい」

 抑えた声で釘を刺される。

 「えっ」
 「宏臣にはもちろん、ほかの誰にも」

 あまりにも必死に懇願され、反射的に頷く。

 「は、はい……」