この縁談、謹んでお断りいたします〜身代わりお見合いのはずが、冷徹御曹司の運命の花嫁になりました

 「シャワー、浴びたいんだろ?」

 耳元で低く囁かれ、体がびくりと震える。

 「は、はい……」
 「じゃあ、手伝ってやる」
 「手伝うって……ひとりでできます!」
 「そうはいかない」

 強引なひと言に心臓が跳ね上がる。振り返る間もなく、頬にこめかみに、やわらかく唇が落とされる。さっきの激しさとは違う、じわじわと熱を広げるような触れ方だ。
 そうしている間にも服は次々と脱がされ、肌を覆っているものはなにひとつ取り払われてしまった。

 「宏臣さん……っ」

 名前を呼んだだけで、すぐに唇が重なった。今度はゆっくりと、たしかめるように。
 水音が響く中で、触れられるたびに意識がぼやけていく。

 「絶対に離してやらないから」

 囁きと同時に、指先がそっと触れる。くすぐったさと恥ずかしさに思わず逃げ腰になると、「逃げるな」と優しく言いながら、宏臣が再び帆奈美を引き寄せる。
 シャワーの水が流れ落ちる音に包まれながら、距離はどんどん近くなるばかりで――。

 「帆奈美」

 名前を呼ばれるだけで、体の強張りが解けていく。触れる手も重なる唇も、すべてが甘くて、ずっと抱えてきた不安や迷いが、少しずつ溶かされていくようだった。